インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の「うつる期間」について
元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。風邪やインフルエンザ、そして新型コロナウイルス感染症にかかったときに、多くの患者さんから「いつまで人にうつる可能性がありますか?」と質問されることがよくあります。仕事や学校、家庭のことを考えると、確かに気になるところですよね。そこで今回のブログでは、できるだけ分かりやすく「感染期間(うつる期間)」についてお話したいと思います。
インフルエンザのうつる期間
インフルエンザは毎年冬に流行しますが、発症してからの感染力が非常に強いのが特徴です。
発症の1日前から、発症後5日程度までは人にうつしやすい期間とされています。特に発熱している間や症状が強い時期は感染力がピークに達します。
臨床の現場では、熱が下がっても咳や鼻水が残る方をよく見ます。このような場合、体調が戻ってきていても、完全に感染力がゼロになっているとは限りません。免疫力の弱い方や基礎疾患がある方と接する際は、熱が下がってから2日程度はマスクや手洗いを徹底することをおすすめしています。
新型コロナウイルス感染症のうつる期間
新型コロナウイルスは、インフルエンザと比べても「うつる期間」が長い傾向があります。
一般的に、発症2日前から発症後7〜10日ほどは人にうつす可能性があるとされています。特に症状が強い時期は、飛沫やエアロゾルを介して広がりやすくなります。
臨床でよく経験するのは、「症状が軽いのに家族内で次々に感染する」というケースです。例えば、若い方が軽い咽頭痛だけで済んでも、高齢のご両親にうつすと重症化してしまうこともあります。そのため、発症から少なくとも1週間は、家族内でもマスク着用や部屋の換気を続けることが大切なんです。
潜伏期間中の感染力について
患者さんからよく聞かれるのが「まだ症状が出ていないときに、人にうつすことはあるんですか?」という質問です。答えは「はい、うつる可能性があります」です。
- インフルエンザ:発症の1日前から感染力あり
- 新型コロナ:発症の2日前から感染力あり
つまり「自分はまだ大丈夫」と思っていても、すでに周囲に感染を広げてしまうことがあるんです。これは学校や職場で集団感染が広がる大きな原因の一つでもあります。
どのくらいで外出や出勤が可能になるか?
厚生労働省の基準では、
- インフルエンザは発症から5日経過し、かつ解熱後2日(子どもは3日)経過するまで
- 新型コロナは発症から5日経過し、かつ症状軽快から24時間経過するまで
は外出を控えるようにとされています。ただしこれはあくまで「公的な基準」であり、症状が残っている場合や家庭に高齢者がいる場合には、さらに慎重な対応をお願いすることがあります。
臨床でよく見るケース
- 「熱は下がったけど咳だけ続いている」→完全に感染力がなくなったとは言えないので注意。
- 「家族全員が順番に感染していく」→家庭内でマスクを徹底しても、食事のときなどに広がりやすい。
- 「高齢の親にうつしてしまい、入院になった」→若い方は軽症でも周囲のリスクは高い。
当院での診療体制について
元八事ファミリー内科クリニックでは、感染症の診療だけでなく、必要に応じて名古屋記念病院や新生会第一病院と連携し、胸部CTをスムーズに依頼できる体制を整えています。新型コロナやインフルエンザのあとに咳が長引く方や、肺炎が疑われる方に対して、速やかに精密検査を受けていただけるようにしています。
呼吸器専門医として多くの肺炎や後遺症の患者さんを診てきました。「ただの風邪だと思っていたら肺炎だった」ということも少なくありません。早めに正確な診断を受けることが安心につながると考えています。
感染を広げないためにできること
患者さんにお伝えしている5つのポイント
- 発症前から感染力があることを意識する
- 症状が軽くても外出・出勤は控える
- マスク・手洗い・換気は基本
- 高齢者や基礎疾患のある家族には特に注意する
- 症状が長引くときは医療機関を受診する
まとめ
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症は、「発症してから」だけでなく「発症前」から人にうつす可能性があることが大きな特徴です。特に新型コロナはうつる期間が長く、家庭や職場での感染拡大につながりやすい感染症なんです。
当院では、地域の皆さんが安心して相談できるように、呼吸器専門医としての経験を活かし、一人ひとりに合わせた診療を行っています。「この症状は大丈夫かな?」と不安なときは、どうぞ気軽にご相談ください。