- 運動誘発喘息(Exercise-Induced Asthma)とは
- 運動誘発喘息の原因
- 運動誘発喘息の初期症状
- 運動誘発性喘息になりやすい人
- 運動誘発喘息は誰でもなる
- 運動誘発喘息の検査・診断
- 運動誘発喘息の治療
- 運動誘発喘息の予防
運動誘発喘息(Exercise-Induced Asthma)とは

運動誘発喘息(Exercise-Induced Asthma)とは、運動中または運動後に気道が一時的に狭くなり、呼吸困難や咳、喘鳴(ゼーゼー音)などの症状が現れる状態を指します。
この状態は、既存の喘息を持つ方だけでなく、喘息の診断を受けていない方にも発症することがあります。特に、寒冷で乾燥した空気を吸い込むことや、激しい運動によって気道が刺激されることが誘因になることが多いです。
運動誘発喘息の原因
運動誘発喘息の主な原因は、運動によって呼吸が速くなり、冷たく乾燥した空気を大量に吸い込むことで気道が刺激され、炎症や収縮を引き起こすことです。また、アレルギー体質や気道の過敏性が高い方は、特に発症リスクが高まります。
運動誘発喘息の初期症状
運動中または運動直後に以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状は、運動開始から数分後に現れ、運動を中止すると徐々に改善することが多いですが、症状が長引く場合や重症化する場合もあります。
運動誘発性喘息に
なりやすい人
運動誘発喘息は、以下のような方に発症しやすい傾向があります。
- 既存の喘息を持つ方、喘息のコントロール状況が悪い方
- アレルギー体質の方
- 寒冷地での運動を行う方
- 持久力を要するスポーツを行う方
運動誘発喘息は
誰でもなる
運動誘発喘息は、実は誰にでも起こり得えます。特別な疾患と思われがちですが、実はごく普通の人でも、全力で走ったり、寒い外気の中で運動したりすると、気道が刺激されて咳や息苦しさが出ることがあるんです。普段は元気で何の症状もない人が、運動中だけ呼吸が乱れる場合、それは身体からのサインかもしれません。
小中学生の特徴
小中学生は、学校生活で走ったり跳んだりする機会が多く、運動誘発喘息が発症しやすい年代です。とくに急なダッシュや寒い朝の体育のあとに咳き込んだり、息苦しさを訴えることがありますが、「風邪かな?」と見過ごされることも。子ども自身がうまく症状を説明できない場合が多いので、保護者や教員が気づくことが大切になってきます。運動のたびに咳が出るようであれば、単なる体力不足ではなく、医学的な対応が必要かもしれません。
高校生の特徴
高校生は部活やスポーツでの競技レベルが高まり、練習量も増えるため、運動誘発喘息の症状が顕著に現れるケースがあります。「疲れてるだけ」「気合いで乗り切れる」などと、症状を軽視して無理をしがちな年齢なので、注意が必要です。部活動の指導者や友人といった身近な人が、早い段階で変化に気づくことが、重症化を防ぐ第一歩になります。
大人の特徴
大人の運動誘発喘息は、「体がなまっているせい」「年齢のせい」と思い込みやすく、発見が遅れがちです。ジョギングやジム通いを始めた直後、運動後のたびに咳や違和感が続く場合、それは単なる息切れではなく、気道の過敏な反応かもしれません。特にストレスや睡眠不足、気温差なども発作の引き金になるため、生活背景も含めての診断が重要です。大人にも起こる、見落とされがちな喘息の一つです。
運動誘発喘息の
検査・診断
運動誘発喘息の診断には、医師による問診や身体検査のほか、呼吸機能検査(スパイロメトリー)、呼気NO測定、運動負荷試験が行われることがあります。これらの検査により、運動による気道の変化を確認し、他の呼吸器疾患との鑑別を行います。


運動誘発喘息の治療
治療の基本は、通常の喘息治療と同じく、気道の炎症を抑えることです。以下のような方法がとられます。
- 吸入ステロイド薬(ICS)の定期使用
気道の炎症をコントロールし、運動時の発作を予防します。 - 運動前の吸入薬(SABAなど)の使用
運動の15〜30分前に短時間作用型の気管支拡張薬(SABA)を吸入することで、症状の発現を防げることがあります。 - ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は、運動誘発喘息にも効果があるとされています。
運動誘発喘息の予防
運動誘発喘息の予防には、以下の対策が有効です。
- 運動前に十分にウォーミングアップをする
- 寒冷時の屋外運動ではマスクやマフラーなどで口元を覆う
- 運動前に、医師の指導のもとで薬剤を使用する
- 定期的な運動習慣を維持し、体力を向上させる
これらの対策を継続することで、症状を出にくくすることにつながっていきます。
運動中や運動後に急激な咳き込みや呼吸困難を感じたり、呼吸に違和感を覚える場合には、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切になってきます。