- 花粉症(アレルギー性鼻炎)とは
- 花粉症の原因
- 名古屋市における花粉の飛散シーズン(目安)
- 初期症状と主な自覚症状
- 花粉症の検査(花粉症におけるアレルゲン検査の有用性)
- 花粉症の治療
- 日常生活でできる花粉症対策
花粉症
(アレルギー性鼻炎)とは
花粉症とは、スギやヒノキなどの植物から飛散する花粉に対して、体の免疫システムが過剰に反応し、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を引き起こす病気です。「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれ、日本ではスギ花粉の飛び回る春先に多く見られますが、アレルギー性鼻炎は他にも、ダニなど、1年を通じて刺激になるようなアレルゲンが関与している「通年性アレルギー性鼻炎」もあります。近年では、大気汚染や生活習慣の変化も影響し、年齢や地域を問わず患者数が増加傾向にあります。
花粉症の原因
花粉症の主な原因は、スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ科などの植物から放出される花粉です。これらの花粉が鼻や目の粘膜に付着することで、体の免疫が異物と認識し、ヒスタミンなどの化学物質が放出されます。その結果、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどのアレルギー症状が現れます。花粉症は、それぞれの地域ごとの、原因となる花粉の「飛散シーズン」に注意していく必要があります。
名古屋市における
花粉の飛散シーズン(目安)
名古屋市では、以下のように季節ごとに異なる花粉が飛散し、花粉症の原因となります。
- ハンノキ属(1月下旬〜6月)
ハンノキやヤシャブシの花粉は、スギよりも早い1月下旬から飛び始めます。春の初めに症状が出る方は、この花粉が原因の可能性もあります。飛散は長く、年によっては初夏まで続くこともあります。 - スギ(2月上旬〜4月上旬)
スギ花粉は2月ごろから本格的に飛散し、3月にピークを迎えます。飛散量が多く、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなど強い症状が出やすい花粉です。毎年多くの人が影響を受けます。 - ヒノキ(3月中旬〜5月上旬)
スギの次に飛ぶのがヒノキ花粉です。3月中旬から増え始め、4月にピークを迎えます。スギ花粉症の人は、ヒノキにも反応することが多く、症状が長引く原因になります。 - イネ科(4月〜10月)
カモガヤなどのイネ科雑草は、春から秋にかけて長期間花粉を飛ばします。公園や道ばたの草むらに多く、近づくと症状が出やすくなります。飛散距離は短いのが特徴です。 - ブタクサ・ヨモギ(8月〜10月)
夏の終わりから秋にかけては、ブタクサやヨモギの花粉が飛散します。飛散量は少なめですが、敏感な人は少量でも症状が出ることがあります。風邪と間違えやすいので注意が必要です。

初期症状と主な自覚症状
花粉症の代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 連続するくしゃみ
- 水のような鼻水
- 鼻づまりによる口呼吸
- 目のかゆみや充血
- 喉の違和感、咳
- 頭がぼーっとする、集中力の低下
- 倦怠感や眠気
症状の強さは人によって異なり、特に花粉の飛散量が多い日は、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
花粉症の検査(花粉症における
アレルゲン検査の有用性)
花粉症かどうかを判断するためには、問診による症状の確認に加えて、どのアレルゲンが影響しているかを調べる以下のような検査が行われることがあります。
花粉症の症状は似ていても、原因となる花粉(アレルゲン)は人によって異なります。アレルゲン検査を行うことで、スギ、ヒノキ、ブタクサ、カモガヤなど、自分がどの花粉に反応しているかを正確に特定できます。
血液検査
特定のアレルゲン(原因物質)に対する抗体の有無を確認します。
アレルゲン検査
当院では、主にイムノキャップラピッド®︎という検査キットを使ってアレルゲンの検査を行います。指先からの微量の血液検体を使って、ほとんど痛みを感じることなくアレルギーを調べることが可能です。
イムノキャップラピッドアレルゲン8の特徴
- 指先からの微妙な血液だけで、簡単に検査することができます。一般採血で用いる注射器は使いませんので小さいお子さんでも安心して行ってもらうことができます。
- 検査結果が20分ほどで出るので、受診当日に結果おお伝えすることができます。
- スギ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、シラカンバ、イヌ、ネコ、ヤケヒョウダニ、以上8つのアレルゲンを調べることができます。
アレルゲンを同定することのメリット
- 飛散時期に合わせた対策が立てやすくなる
- 適切な薬の選択や、舌下免疫療法などの根本治療の適応が判断しやすくなる
- 他のアレルギー(ハウスダストやダニなど)がないかも一緒に確認できる
「何の花粉に反応しているか知りたい」「対策をしっかり立てたい」という方は、一度アレルゲン検査を受けることをおすすめします。
花粉症の治療
治療の基本は、症状を和らげるための対症療法と、可能な限りアレルゲンとの接触を避ける環境整備です。
薬物療法
花粉症の治療は、主に以下の5種類の選択肢があります。花粉症治療は、症状が出現する前から予防的に服用を始めることによって、そのシーズンの花粉症による症状を緩和するためには有効な場合が多いです。

①抗ヒスタミン薬(飲み薬)
花粉症の治療に使われる代表的なお薬が「抗ヒスタミン薬」です。くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなど、つらい症状をやわらげる効果があります。
【花粉症治療に使われる抗ヒスタミン薬について】 | |
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抗ヒスタミン薬には、大きく分けて「処方薬」と「市販薬(OTC薬)」があります。 | |
処方薬について | 処方薬は、医師の診察を受けて処方されるお薬です。症状の強さや体質に合わせて、効果が高く眠気の少ない最新の薬を選ぶことができます。健康保険が使えるため、薬代は1~3割負担で済みます。例えば、1か月分の薬代は500〜1000円ほどで、別途診察料がかかりますが、症状が長引く方にはより経済的であることが多いです。 |
市販薬(OTC薬)について | 市販薬は、薬局やドラッグストアで手軽に購入でき、忙しい方や軽い症状の方に便利です。処方薬と同じ成分のもの(例:アレグラFX、クラリチンEX)もあります。ただし、保険が適用されないため、1か月分で2000〜3000円ほどの費用がかかります。 |
どちらを選ぶべき? | 軽い症状なら市販薬でもいいかもしれませんが、症状がつらい場合や長引く場合には、処方薬を選んでもらったほうがいいかと思われます。当院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、最適なお薬をご提案いたします。 |
②点鼻薬(主にステロイド薬)
鼻づまりや鼻水が強い場合に使用します。鼻の粘膜に直接作用するので効果的です。
【主な点鼻ステロイド薬】
商品名 |
投与回数 |
主な特徴 |
---|---|---|
フルナーゼ® |
1日2回 |
速効性あり、眠気なし、長期使用でも安全性が高い |
ナゾネックス® |
1日1回 |
強い抗炎症作用、持続時間が長い |
アラミスト® |
1日1回 |
1回投与で長時間効果、鼻の奥まで届きやすい |
③点眼薬(抗ヒスタミン薬など)
目のかゆみや目やにに使います。
分類 |
商品名 |
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抗ヒスタミン薬 |
パタノール® |
アレジオン点眼液® アレジオンLX点眼液® |
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ザジテン点眼液® |
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リボスチン® |
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ステロイド薬(重症例用) |
フルメトロン® |
プレドニン眼科用液® |
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ケミカルメディエーター遊離抑制薬 |
インタール®点眼液 |
④ロイコトリエン受容体拮抗薬(飲み薬)
鼻づまりに特に効果があり、抗ヒスタミン薬と併用されることもあります。
⑤漢方薬
体質に合わせて処方され、症状の緩和をサポートします。眠気が出にくいという利点もあります。
舌下免疫療法について
花粉症の根本的な改善を目指す方法として、「舌下免疫療法」があります。これは、原因となる花粉エキスを少量ずつ舌の下から体内に吸収させ、時間をかけて免疫の過剰反応を抑える治療です。治療は毎日継続して数年行う必要があり、すべての方に適応できるわけではありません。治療を始める前に、医師による十分な説明と適応の確認が必要です。
日常生活でできる花粉症対策
花粉症の症状を軽減するには、日常生活での工夫も大切です。
- 花粉が多い日は外出を控える
- 外出時はマスク・眼鏡・帽子を着用する
- 帰宅後すぐに洗顔・うがい・鼻洗浄を行う
- 洗濯物や布団は花粉の飛散が少ない時間に干す、または室内干しにする
- 室内の換気はタイミングを見計らって短時間で行う