日中の強い眠気
(寝ても寝ても眠い)
夜しっかり眠ったはずなのに、日中も強い眠気が続いてしまう―そんな経験はありませんか?通勤電車の中でうとうとしてしまう、会議中に意識が遠のく、休日に予定もなく何時間も寝てしまう…これらは単なる「疲れ」ではなく、医学的に対応が必要な症状である場合もあります。
日中の過度な眠気は、生活の質(QOL)を大きく低下させるだけでなく、仕事や学業のパフォーマンス低下、交通事故などのリスクにもつながることがあります。
以下に、日中の眠気を感じる背後にある代表的な原因や病気について、代表的な病気を列挙します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
もっとも頻度が高く、見過ごされやすいのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。この病気は、睡眠中に何度も呼吸が止まることによって、眠りの質が極端に低下する病気です。夜間に十分な睡眠時間を確保しているように見えても、実際は身体が深く休めていないため、日中に強い眠気が残ります。
「いびきが大きい」「寝ている途中で何度も目が覚める」「起床時に頭痛がある」といったサインがある方は、SASの可能性が疑われます。診断には、アプノモニターと呼ばれる簡易検査や、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)などが用いられ、治療には持続陽圧呼吸療法(CPAP)などが推奨されます。当院では、アプノモニターを貸し出し、自宅で一日検査を受けていただくことで、睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数を評価していきます。
睡眠不足
仕事や家庭の事情などで、慢性的に睡眠時間が足りていない方にも、日中の強い眠気が現れます。本人にとっては「これが普通」と思っていても、実際には脳や身体が十分に回復できていない状態が続いているケースです。
特に若年層では、就寝時間が遅くなりがちで、平日の睡眠不足を週末の「寝だめ」で補おうとする傾向がみられますが、生活リズムの乱れにより、かえって眠気が強くなることもあります。生活習慣の見直しが鍵となります。
薬の影響
内服している薬の中にも、眠気を副作用として引き起こすものがあります。抗アレルギー薬(特に第一世代の抗ヒスタミン薬)や抗不安薬、睡眠導入薬などは眠気を誘発する代表例です。また、薬を数種類服用している場合、それぞれの薬が相互作用を起こし、眠気を強めてしまうこともあります。医師に相談しながら、必要に応じて薬の見直しを行うことが重要です。
貧血や甲状腺機能低下症などの
内科的疾患
日中の眠気の原因は、呼吸器や神経、精神系の病気だけではありません。例えば鉄欠乏性貧血や甲状腺機能低下症、肝機能障害、糖尿病などの内科的な病気でも、全身のだるさや眠気が生じることがあります。
血液中の酸素運搬能力が低下していたり、代謝が落ちていたりすると、身体は自然と省エネモードになり、常に眠気を感じるようになるんです。これらの病気は、血液検査などで判明することが多く、適切な治療をすることによって改善が期待できます。
うつ病・抑うつ状態
心の不調もまた、日中の眠気の原因になり得ます。特にうつ病や抑うつ状態では、「夜に眠れない」「早朝に目が覚めてしまう」「何度も途中で起きる」といった睡眠の質の低下が起こりやすく、結果的に日中に強い眠気が現れることがあります。
単なる疲労ではなく、気分の落ち込みや意欲低下、集中力の低下が伴う場合は、精神的な背景の評価が必要です。
寝ても寝ても眠い
女性の原因は?
寝ても寝ても眠いと感じる原因として、女性特有の原因も考えられます。まず、ホルモンバランスの変化が影響することがあります。特に月経前や更年期には、女性ホルモンの変動により睡眠の質が低下し、日中の強い眠気が出ることがあります。また、鉄欠乏性貧血や甲状腺機能低下症などの病気も、一般的に女性の頻度が高く、体のだるさや慢性的な眠気を引き起こす原因となります。さらに、日本人女性は骨格的に顎が小さい人が多く、これによって上気道(のどの奥)が狭くなる要因になって、結果的に睡眠時無呼吸症候群を引き起こすこともあります。「しっかり寝ているのに疲れが取れない」「日中の眠気が強い」といった状態が続く場合は、生活習慣を見直すとともに、医療機関での検査を受けることをおすすめします。
まとめ
「疲れているだけ」「年のせいかも」と見過ごされがちな日中の眠気ですが、その背景には隠れた病気が存在している可能性もあります。また、仕事や学業のパフォーマンス低下、交通事故などのリスクにもつながることがありますので、日中に何度も居眠りしてしまう、生活に支障をきたしている、と感じたときは、ぜひ一度ご相談ください。