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エピペンとは?突然のアレルギー反応に備えるために知っておきたいこと

一般内科

 

突然のアレルギー反応「アナフィラキシー」とは

こんにちは。名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックです。今回は「エピペン(アドレナリン自己注射薬)」についての内容を、ブログに取り上げてみたいと思います。

私はこれまで、アレルギー反応による救急搬送の場面を何度も見てきましたが、その中で感じるのは、「エピペンの存在を知っていれば助かる命がある」ということなんです。

アナフィラキシーとは、食べ物や薬、蜂刺されなどをきっかけに、短時間で全身に強いアレルギー反応が起こる状態を指します。
息苦しさ、喉の腫れ、血圧低下、意識がぼんやりするなどの症状が短時間で進行することが特徴で、放置すると命に関わることもあります。

エピペンとは? ― 命を救う「アドレナリン自己注射薬」

エピペンは、アナフィラキシーの初期対応として使用される「アドレナリン自己注射薬」です。
「アドレナリン」は心臓の働きを助け、血圧を保ち、気道を広げる作用があります。これを太ももに自分で打つことで、症状の進行を一時的に食い止めることができるんです。

医療機関に到着するまでの“つなぎ”として、非常に重要な役割を果たします。つまり、エピペンは「救急車が来るまで命を守るための道具」なんです。

どんな人にエピペンが処方されるの?

食物アレルギーのある方

特にピーナッツ、卵、牛乳、そば、えび、かになどの食物アレルギーがある方は注意が必要です。 小児では、学校や給食中に発症することが多く、当院でも「給食でアレルギー反応を起こしてしまった」という相談を受けることがあります。

蜂刺されアレルギー

スズメバチやアシナガバチに刺されると、短時間で血圧が下がり、呼吸が苦しくなるケースがあります。 以前に強いアレルギー反応を起こしたことがある方は、必ずエピペンを携帯しておくことをおすすめします。

薬剤アレルギー

抗生物質や鎮痛薬、造影剤(検査で使用する薬)などが原因となることもあります。 過去に薬でアナフィラキシーを起こした方は、再び同じ薬に触れる可能性を考え、エピペンを持っておくと安心です。

エピペンの使い方 ― 迷ったら「打つ」が原則

アナフィラキシーの怖いところは、進行が早いことです。
症状が出てから数分で重症化することもあるため、「迷ったら使う」ことが大切なんです。

使用のタイミング

次のような症状が同時に複数出た場合は、すぐに使用します。
【具体的症状】
息苦しさ、咳、声が出しにくい - 唇や喉の腫れ - 顔面蒼白、冷や汗、ふらつき - 蕁麻疹(じんましん)やかゆみが全身に広がる、など

使い方の手順

1. キャップを外す 2. 太ももの外側に垂直に押し当て、カチッと音がするまで強く押す 3. 10秒ほどそのまま固定 4. 使用後は救急要請(119番)し、医療機関へ向かう

エピペンを使った後も、症状が落ち着いたからといって安心はできません。
再び症状がぶり返す「二相性アナフィラキシー」が起こることがあるため、必ず医療機関での観察が必要になります。エピペンを打ったら終わり、ではないことについては、注意が必要です。

臨床でよく見る「使うのをためらってしまう」ケース

実際に診察していると、「本当に打っていいのか迷った」「症状が軽い気がして様子を見てしまった」という声をよく聞きます。
しかし、エピペンは“打ちすぎて困る”薬ではありません。
アドレナリンは体内で分解されやすく、一時的な血圧上昇や動悸が出ても、命に関わる危険性は極めて低いです。

むしろ、使用をためらったことによる重症化の方が、はるかにリスクが高いんです。
「迷ったら打つ」――この意識が命を守ることを、知っておいてほしいです。

エピペンを持つことの安心感と、周囲への共有

エピペンは「持っているだけで安心」という声も多いです。
実際、学校や職場、外出先などで「いざという時に自分で対応できる」という心理的な支えにもなります。

また、周囲の人にも「エピペンを持っていること」「どこに入っているか」「使い方」を共有しておくことが大切です。
特にお子さんの場合は、担任の先生や保健室の先生に使い方を説明しておくと安心ですね。

エピペンの処方・更新について

エピペンは処方箋医薬品で、医師の診察が必要です。使用期限は約1年のため、定期的な更新が必要になります。
「期限が切れていた」「古いものをそのまま持っていた」というケースも見かけますが、いざという時に使えなければ意味がありません。

当院では、エピペンの新規処方や更新を行っています。初めての方でも安心してご相談ください。

まとめ ― 命を守る“たった1本”をためらわずに

アナフィラキシーは、誰にでも突然起こりうるものです。
ですが、エピペンを正しく使えるだけで、その後の命のリスクを大きく下げることができます。

呼吸器・アレルギー専門医として、私が強くお伝えしたいのは、
「ためらわずに使う勇気」と「日頃からの準備」が命を守るということです。

元八事ファミリー内科クリニックでは、アレルギーの検査やエピペンの処方まで一貫して行っています。
もしご自身やご家族にアレルギー体質があり、「自分も持っておいたほうがいいのかな」と思われた方は、どうぞ気軽にご相談ください。