鉄分不足とフェリチンとは?~隠れ貧血という概念について〜
元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。皆さんは、健診などで、「貧血気味ですね」と言われた経験はありませんか?貧血というと、主にヘモグロビンという項目の値をみるのですが、血液検査でヘモグロビンが正常でも、体の中の鉄が不足しているケースというのは少なくありません。そのときに大切な指標となるのがフェリチンです。そこで今回のブログでは、鉄分不足とフェリチンの関係について、わかりやすく解説していきたい思います。
フェリチンとは?鉄の貯蔵庫のような存在
フェリチンとは、体内で鉄を貯蔵する役割を持つタンパク質です。いわば「鉄の貯蔵庫のような存在で、必要に応じて体の循環血液中に鉄を供給します。このフェリチンが低下すると、ヘモグロビンが正常でも「隠れ鉄欠乏」と呼ばれる状態になり、将来的に鉄欠乏性貧血へ進行するリスクが高くなるのです。
フェリチンが低いとどんな症状が出る?
臨床現場でよく見られる症状は以下のようなものです(ヘモグロビンが低い場合)。
- 慢性的な疲労感や倦怠感
- 動悸や息切れ
- 頭が重い、集中力が続かない
- 抜け毛や爪の脆さ
- 顔色が悪い、めまいがする
特に女性では、月経や出産で鉄が失われやすいため、ヘモグロビン、フェリチンがともに低い方が多いです。実際に、呼吸器専門医として呼吸器診療の診察をしている中で、「息切れ」を訴える患者さんの中に、実は鉄欠乏が背景にあったケースを何度も経験しています。
健診では見逃されやすい「隠れ鉄欠乏」
健診で測定されるのは多くの場合「ヘモグロビン値」だけです。なので、ヘモグロビンが正常でもフェリチンが不足している「隠れ鉄欠乏」が見逃されやすいんです。
鉄分不足の原因
鉄不足の背景には、いくつかの代表的な原因があります。
- 月経や出産:女性に多い出血による鉄の消耗
- 消化管の病気:胃潰瘍、大腸ポリープ、がんなどからの出血
- 食生活:肉や魚をあまり食べない、偏食、ダイエット
- 吸収不良:胃の手術後や腸の病気による鉄吸収障害
特に中高年の方で鉄分不足が見つかった場合は、消化管からの出血が隠れていないかをしっかり確認する必要があります。当院(元八事ファミリー内科クリニック)では、名古屋記念病院や新生会第一病院、第二日赤病院と連携し、必要に応じて胃カメラ・大腸カメラなどの精密検査をスムーズに依頼できる体制を整えています。
鉄分不足の検査方法
鉄分不足を調べる際には以下の検査を行います。
- 血算(ヘモグロビン、MCVなど)
- 血清鉄(Fe)
- フェリチン(貯蔵鉄の指標)
- TIBC・UIBC(鉄結合能の評価)
この中でもフェリチンが特に重要です。フェリチンが低い場合は、症状がなくても鉄不足と考えられます。
鉄分不足の治療法
鉄不足の治療は、原因に応じて行います。
- 食事改善:赤身の肉、魚、大豆製品、緑黄色野菜を積極的に摂る。ビタミンCを一緒にとると鉄の吸収が高まります。
- 鉄剤の内服:数か月にわたり鉄剤を継続。胃腸障害が強い場合は点滴治療も検討します。
- 基礎疾患の治療:消化管出血など、原因となる病気を見逃さないことが大切です。
なお、体の中の鉄を十分に貯めるには通常数か月以上の継続が必要となります。
鉄分不足を放置するとどうなる?
鉄不足を放っておくと、以下のリスクがあります。
- 重度の鉄欠乏性貧血になる
- 動悸や息切れが強くなり心臓への負担が増える
- 集中力低下による仕事や学業への影響
- 妊娠時の合併症リスク増加
- 高齢者では転倒や体力低下の原因になる
まとめ〜フェリチンを測ってみましょう
鉄分不足はヘモグロビンだけでは判断できません。フェリチンを測ることで「隠れ鉄欠乏」を見つけることができます。疲れやすい、息切れ、抜け毛、めまいなどが気になる方は、一度フェリチンを含めた血液検査を受けることをおすすめします。
元八事ファミリー内科クリニックでは、幅広く体の不調を確認し、必要に応じて近隣病院と連携した精密検査を行える体制を整えています。地域の皆さまの安心できる「かかりつけ医」として、一人ひとりに寄り添った診療を行っていますので、気になる症状があればお気軽にご相談ください。