尿検査の「尿蛋白」と「尿潜血」における偽陽性・偽陰性とは?
健康診断やクリニックでの診察の時に、尿検査はよく行われる基本的な検査の一つです。特に「尿蛋白」や「尿潜血」は、腎臓や尿路の異常を見つける重要な指標となります。しかし、検査で「陽性」や「陰性」と表示されても、実際には病気がないのに陽性となる「偽陽性」や、逆に病気があるのに陰性と出る「偽陰性」が起こることがあります。そこで今回のブログは、この尿蛋白と尿潜血に関する偽陽性・偽陰性について、具体例を挙げながらわかりやすく解説していきたいと思います。
尿蛋白とは
尿蛋白の役割と意味
尿蛋白は、尿の中に蛋白質が含まれているかを調べる項目です。正常な腎臓では、蛋白質はほとんど尿中に漏れません。したがって尿蛋白が陽性となる場合は、腎臓のろ過機能に何らかの異常が起きている可能性を示します。
例えば、高血圧や糖尿病による腎臓病、慢性腎炎、ネフローゼ症候群などで、尿蛋白が増加することがあります。
尿潜血とは
尿潜血の役割と意味
尿潜血は、尿の中に血液(赤血球)が混じっているかを調べる検査です。目で見えるほど赤くなる血尿だけでなく、見た目は普通でも、顕微鏡レベルで血液が混じってさえすれば、検出されます。
尿潜血が陽性となる背景には、膀胱炎や尿路結石、腎炎、腎がんなど、幅広い疾患が関与するため、注意が必要です。
偽陽性とは?
偽陽性とは、実際には病気がないのに検査結果が「陽性」と出てしまうことを指します。
尿蛋白の偽陽性の例
- 立位性蛋白尿(orthostatic proteinuria)・・・若年者に多い、一過性の尿蛋白増加になります
- 激しい運動をした直後(マラソンや筋トレ後など)
- 発熱や脱水による一時的な影響
- 妊娠中の一過性の変化
- 濃い尿(朝一番の尿など)
尿潜血の偽陽性の例
- 激しい運動後に筋肉からミオグロビンが尿中に出る
- 月経中の尿サンプルが混ざる
- 消毒液(ヨード剤など)の影響
- 濃い尿による試験紙の誤反応
偽陰性とは?
偽陰性とは、病気が存在するにもかかわらず検査結果が「陰性」と出てしまうことです。
尿蛋白の偽陰性の例
- 薄い尿(大量に水分を摂った後など)では蛋白濃度が下がる
- 特定の薬剤(利尿薬など)によって一時的に尿蛋白が減る
- 試験紙の感度限界以下の微量蛋白
尿潜血の偽陰性の例
- 尿が極端に薄くなり赤血球が検出されにくい
- ビタミンCを大量摂取している場合(酸化還元反応の影響で試験紙の反応が抑えられる)
- 検体が長時間放置され赤血球が壊れてしまった場合
尿検査の結果を過信しないことが大切
尿蛋白や尿潜血の検査は、非常に手軽で有用ですが、あくまでスクリーニング検査です。偽陽性や偽陰性があることを理解し、結果だけに頼らず症状や病歴、他の検査(血液検査や画像検査など)と組み合わせて判断する必要があります。
尿蛋白・尿潜血が出たときに考えられる病気
- 腎臓病(慢性腎炎、IgA腎症、糖尿病性腎症など)
- 尿路結石
- 膀胱炎、腎盂腎炎
- 前立腺の病気
- 膀胱がんや腎がん
正確な結果を得るための工夫
- 朝一番の尿を採取すると濃度が安定しやすい
- 月経中は採尿を避ける
- 運動直後や発熱時は避けて採尿する
- コップの最初の部分ではなく、中間尿を採取する
まとめ
尿検査の「尿蛋白」や「尿潜血」は、腎臓や尿路の健康状態を知る上で重要な検査ですが、偽陽性や偽陰性が起こることがあります。運動や食事、薬剤、採尿方法など、ちょっとした条件によって結果は変わり得ます。そのため、検査結果だけで安心したり、不安になったりせず、必ず医師の診断を受けるようにしていてください。元八事ファミリー内科クリニックでは、尿検査を含む健康診断や生活習慣病の管理を行っております。引き続き、よろしくお願いいたします。