台風シーズンに悪化しやすい呼吸器症状
夏の終わりごろから秋にかけて、日本(名古屋)において、台風の接近・通過が増えます。喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎などをお持ちの方は、台風の接近の前後に、咳や息苦しさ、胸の圧迫感が増えやすいと感じることも、少なくないかと思います。また、急激な気圧変化は「自然気胸」の発症リスクにも関係することが知られています。そこで今回は、台風と呼吸器症状との関連性と、台風に備えての実践的な対策を、元八事ファミリー内科クリニックがわかりやすく説明していきたいと思います。
台風が呼吸器に影響する主な理由
① 急激な気圧低下で気道が敏感になる
台風が接近すると、短時間で気圧が下がります。気圧が下がると、気道の粘膜や血管の緊張具合が変化して、むくみやすくなります。その結果、気道が狭くなり、喘息の方ではゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴や、息切れ、夜間~明け方の咳が増えやすくなる傾向になります。
② 湿度の上昇でアレルゲンや刺激物が増える
台風が接近する際には、湿度が急上昇します。高湿度は、カビやダニの活動を活発にして、微細な粒子が空気中に浮遊しやすくなります。これらによって、アレルギーや気道過敏性を高め、咳や鼻症状を引き起こす要因になります。
③ 強風が花粉・粉じん・PM2.5などを広範囲に拡散
強い風は花粉、黄砂、土ぼこり、排気由来の粒子(PM2.5など)を巻き上げます。秋の台風期はブタクサやヨモギ花粉のピークと重なることがあり、雨上がりにはカビ胞子が増えるため、注意が必要なんです。
④ 気圧変化と自然気胸の関係
急激な気圧低下は、肺の一部に弱い部分(肺嚢胞・ブレブ)がある人にとって、自然気胸の引き金になることがあります。特にやせ型の若年男性や過去に気胸を経験した方では、台風や前線通過のタイミングで発症する例も報告されています。突然の胸の痛みや片側の強い息切れが出た場合は、救急受診が必要になります。
台風前後に起きやすい症状
- 咳の増加(昼夜問わず)
- 息切れや胸の圧迫感
- ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴
- 痰の増加や粘りの変化
- 突然の胸痛や片側だけの呼吸困難(気胸の可能性)
台風期に実行したい予防とセルフケア
薬を切らさない
吸入薬や内服薬は常に余裕を持って準備し、自己判断で中断しないことが重要です。
室内環境を整える
除湿機やエアコンのドライ機能で湿度50~60%を保ち、空気清浄機で微粒子を除去します。
外出タイミングの工夫
台風の接近時や雨上がり直後は、粒子濃度が高くなるため、不要不急の外出は控え、やむを得ない場合はマスク着用を徹底します。
体調記録をつける
気圧と症状の関係を記録することで、発症や悪化のパターンが見え、予防に役立つこともあると思います。まずは、自分がどのような状況で症状が出やすくなるのか傾向を知ることが大切です。
まとめ
台風は気圧低下、湿度変化、アレルゲン拡散を同時に引き起こし、喘息やCOPDだけでなく自然気胸のリスクも高まることがあります。なので、呼吸器疾患をお持ちの方は特に、気象情報をこまめにチェックして、症状の予兆を感じたら、早めの対応を心がけてもらうといいと思います。胸痛や急な呼吸困難を伴う場合には、迷わず救急受診をすることも検討してください。