「上の血圧」と「下の血圧」、どちらが大事?
こんにちは、元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。血圧の話になるとよく聞かれる質問が「上の血圧(収縮期血圧)が大事なの?それとも下の血圧(拡張期血圧)が大事?」というものです。そこで今回のブログでは、上の血圧(収縮期血圧)、下の血圧(拡張期血圧)、それらの評価の仕方、などについて、少し触れていきたいと思います。
目次
- 血圧の基本:上と下は何が違う?
- どちらが大事?臨床でよく見る答え
- 臨床でよく見るパターン(実例)
- 高いとどうなる?リスクの違い
- 家庭での測り方と注意点(家庭血圧)
- 治療や生活習慣で何を優先するか
- よくある質問(Q&A)
- 受診のご案内(元八事ファミリー内科クリニック)
血圧の基本:上と下は何が違う?
まず簡単に整理すると。血圧は2つの数値で表されます。上の血圧は「収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)」というもので、心臓がギュッと収縮して血液を全身に押し出すときの血管内の圧力のことを指します。一方で、下の血圧は「拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)」といって、心臓が休んで血液が心臓に戻ってくる間の血管内の圧力のことです。
患者さんの言葉で言うと、上が「ドーンと押される圧」、下が「じわっとかかる圧」といったイメージです。どちらも血管や臓器に負担を与えますが、年齢や病気の種類で重要度が変わります。
どちらが大事?臨床でよく見る答え
正直に言うと、「どちらが大事か」は一概には言えません。臨床では、年齢や体の状態、合併症(糖尿病、腎臓病、心臓病など)によって評価が変わるからです。ただし現場でよくお伝えしている大きなポイントは以下の通りです。
- 高齢者(おおむね65歳以上)では「上の血圧」が特に重要:動脈(血管)が硬くなっていると、収縮期血圧が高くなりやすく、脳卒中や心不全のリスクが増します。
- 若年〜中年では「下の血圧」も見逃せない:拡張期血圧が高い場合、末梢の血管抵抗が高く、長期的に心血管イベント(心筋梗塞など)につながることがあります。
- どちらも高い場合は当然リスク大:両方が高いと心臓や腎臓への負担が大きく、早めの介入が必要です。
ポイントまとめ
私は患者さんに「どちらが大事かではなく、『あなたの血圧のどの数字が高いか』を見て対策を立てるのが大事なんです」とお話ししています。患者さん個別の背景に合わせて、治療方針を一緒に考えるのが私たちの役目です。
臨床でよく見るパターン(実例)
パターン1:高齢で上が高い(収縮期高血圧)
例:70代の女性。家庭血圧が150〜170/80前後。息切れやめまいはないが、血圧が高め。身体は「硬く」なった血管が原因で、上の血圧が高くなることが多いです。この場合、まずは上を安全に下げること(脳卒中予防が重要)を優先します。薬の選び方や降圧目標は個別に決めていきます。
パターン2:中年で下が高い(拡張期高血圧)
例:50代の働き盛りの男性。会社の健康診断で140/95と言われた。生活習慣(運動不足、塩分過多、ストレス)が背景にあることが多く、下の血圧が高いと将来の心血管リスクが上がります。まずは生活習慣改善+必要なら薬物療法を検討していきます。
パターン3:夜間だけ高い(夜間高血圧)
夜間に血圧が下がらない人や夜間に高くなる人は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることがあります。呼吸器専門医としての経験上、こうしたケースでは睡眠無呼吸の評価をしていくことが、血圧をあげる要因の発見につながることもあるので、おすすめしたりしています。
上が高い場合・下が高い場合のリスクの違い
上の血圧が高いと脳卒中(特に脳出血)や心不全のリスクが高まりやすいです。一方、下の血圧が高いと長期的に心筋梗塞や全身の動脈硬化が進行するリスクがあります。どちらもほっておくと「気づかないうちに」臓器にダメージが進行します。
家庭での測り方と注意点(家庭血圧)
家庭血圧は診察室での一時的な測定(白衣高血圧)よりも日常の状態を反映するため、とても重要です。血圧測定のに関しては、まずはリラックスした状態で測っていただく、ということが一番大切になります。以下を参考にしてみてください。
- 朝:起床後1時間以内、排尿後、薬を飲む前に座って1〜2分安静にして測る。
- 夜:就寝前にリラックスした状態で測る。
- 同じ姿勢・同じ腕で測る(通常は右か左の腕どちらかを決めて継続)。
- 測定は1回ではなく、数日間にわたって朝晩2回ずつ測ると信頼度が上がります。もし可能なら2回ずつをお勧めしますが、忙しいようであれば、1回でも構いません。
家庭での目安は個人差がありますが、一般的に朝の家庭血圧で130/80mmHg未満を目標とすることが多いです(ただし年齢や合併症により目標は調整します)。
治療や生活習慣で何を優先するか
治療は大きく分けて生活習慣の改善と薬物療法です。私たちが患者さんにまずお勧めしていることは下記です。
- 塩分コントロール:日本人は塩分摂取が多くなりがち。まずは「薄味」に慣れる工夫をすることが大切です。調味料の量、加工食品のチェックをしていただくといいかと思います。
- 体重管理と運動:週に中強度の運動を合計で150分程度(ウォーキングなど)。急に頑張りすぎず、日常に取り入れやすい運動から始めるのが続けやすいです。
- 節酒・禁煙:お酒の量を減らす、たばこをやめるだけで血圧が下がることがあります。
- 薬の適正使用:必要ならば降圧薬を処方します。薬は種類や組み合わせで効果や副作用が違うため、当院では個々の生活背景や合併症を踏まえて選択しています。
よくある質問(Q&A)
Q:一度薬を始めたら一生やめられないのですか?
A:必ずしも一生ではありませんが、長期的に安定しているか、原疾患(腎臓病など)がないかを確認した上で、相談して減量・中止を検討することはあります。ただし勝手に止めることはやめてほしいです。
Q:測る時間でかなり数値が違います。どれを信じればいいですか?
A:家庭での朝と夜の平均値を信頼します。診察室での1回だけの値は状況によって上がること(白衣高血圧)があります。
Q:薬に副作用はありますか?
A:薬によって違います。めまい・だるさ・咳(ごく一部の薬)などが出ることがあります。副作用が心配な場合はすぐにご相談ください。当院では副作用の出やすさも含めて薬を選びます。
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血圧は「測って終わり」ではありません。生活状況や他の病気の有無で管理法が変わってきます。元八事ファミリー内科クリニックでは、患者さん一人ひとりに合わせた血圧管理を行っていきますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
