喘息治療、吸入薬と貼付薬の違いは?
喘息治療の中心は吸入薬!貼り薬との違い
喘息は、気管支に慢性的な炎症が起きることで、咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)などの症状が繰り返し現れる病気です。日常生活に支障が出る前に、適切な治療によって炎症を抑えることが重要です。
その治療の中心となるのが「吸入薬」ですが、実際の診療では「貼り薬(貼付薬)」や「飲み薬」も併用されることがあります。「吸入薬と貼り薬はどう違うの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、吸入薬と貼り薬の違いについて、特に薬の量(μgとmgの違い)や副作用、使用目的に注目して解説します。
吸入薬とは?喘息治療の基本薬
吸入薬は気道に直接届く薬
吸入薬は、薬剤を霧状または粉末状にして吸い込むことで、気道に直接届ける治療法です。主に以下の成分が使用されます。
- 吸入ステロイド薬(ICS):気道の炎症を抑える薬。毎日使用して喘息のコントロールを行います。
- 気管支拡張薬:気道の筋肉をゆるめて、呼吸を楽にします。発作時の頓用や、長時間作用型の維持薬として使われます。
吸入薬はμg(マイクログラム)単位
吸入薬は非常に少ない量(μg=100万分の1グラム)で効果を発揮します。これは、薬剤が炎症のある気管支にピンポイントで届くため、全身に巡らせる必要がないからです。
例えば、一般的な吸入ステロイド薬の1回分の量は100~200μg程度と、ごく微量です。それにもかかわらず、炎症をしっかりと抑える効果があります。
副作用が少ないのも吸入薬の魅力
薬が肺に直接届くため、全身への移行が少なく、動悸や吐き気といった副作用が起こりにくいという特長があります。ただし、吸入後のうがいを怠ると、のどの違和感やカンジダ(口腔内の白い斑点)が出ることがあるため、使用後のうがいは大切です。
貼り薬(貼付薬)とは?高齢者や小児に使われることも
皮膚から吸収されて全身に作用
貼り薬は、皮膚に貼って有効成分を体内に吸収させるタイプの薬です。喘息で使用される代表的な貼付薬には、以下のようなものがあります:
- ホクナリンテープ(ツロブテロールテープ):気管支を広げる気管支拡張薬。小児にもよく使われます。
貼り薬はmg(ミリグラム)単位の高用量
貼り薬は、皮膚から成分がゆっくりと吸収され、血流に乗って全身に行き渡ります。そのため、効果が出るまでに時間がかかるうえ、必要な薬の量も多くなります。
多くの貼り薬は1mg~2mg単位で処方されており、吸入薬の数千倍以上の量が必要になります。これは、気道に直接作用させる吸入薬と違い、全身を経由して気道に到達させるためです。
貼り薬は副作用が出やすい傾向
全身に作用するため、以下のような副作用が出ることがあります。
- 動悸(心拍数の増加)
- 手の震え
- 吐き気・嘔吐
- 不眠や頭痛
特に高齢者や心疾患をお持ちの方には慎重な使用が求められます。
吸入薬と貼り薬、どちらが効果的?
基本は吸入薬、貼り薬は補助的な役割
喘息治療の基本は吸入ステロイド薬です。少量で高い効果を発揮し、副作用も少ないことから、ガイドラインでも第一選択薬とされています。
一方で貼り薬は、「吸入がうまくできない場合」の代替手段として使用されます。たとえば、
- 乳幼児や未就学児など、吸入器具を使いこなすのが難しいお子さん
- 認知症や手先が不自由で吸入が困難な高齢者
このようなケースでは、貼り薬を使うことで無理なく治療を継続できますが、あくまで吸入薬が使えない場合の選択肢です。
まとめ:それぞれの特徴を理解し、最適な治療を
吸入薬と貼付薬には、それぞれに特徴と役割があります。
- 吸入薬:少量(μg単位)で気道に直接作用、副作用が少ない
- 貼り薬:高用量(mg単位)で全身を介して作用、副作用が出やすい
そのため、原則としては吸入薬を基本とし、貼り薬は補助的に使用するというのが、喘息治療の考え方になります。
当院では、患者さま一人ひとりの年齢やライフスタイルに合わせて、最も効果的で使いやすい薬を提案しています。
薬の使い方や副作用が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。