- マイコプラズマとは?
- マイコプラズマ肺炎の感染経路(どうやってうつる?)
- マイコプラズマ肺炎の流行時期
- マイコプラズマ肺炎症状
- マイコプラズマ肺炎の合併症・注意点
- マイコプラズマ肺炎の検査・診断方法
- マイコプラズマ肺炎の治療方法
- マイコプラズマ肺炎の予防(ならないために)
- マイコプラズマ肺炎は出席停止になる?
- マイコプラズマ肺炎で受診するタイミング
- マイコプラズマ肺炎(感染症)に関するよくある質問
- まとめ
マイコプラズマとは?
マイコプラズマは、細胞壁を持たない特殊な微生物で、細菌とウイルスの中間的な存在と表現されることもあります。そのため、一般的な細菌に効く抗生物質(ペニシリン系やセフェム系)は効果がなく、マイコプラズマをターゲットとした別の抗生物質が必要になります。ヒトに病気を起こす代表的なものが、「マイコプラズマ・ニューモニエ」です。この、「マイコプラズマ・ニューモニエ」は、呼吸器領域に感染して、咳や発熱、肺炎などを引き起こします。特に小児や学童期に多く見られますが、大人でも発症することはあります。毎年、数年ごとに流行の波が見られ、地域や学校単位で一気に広がることがあります。風邪のような症状から始まり、次第に長引く咳だけが残ったりすることが特徴的です。
マイコプラズマ肺炎の感染経路(どうやってうつる?)
感染は主に飛沫感染(咳やくしゃみのしぶきによる感染)や接触感染によって広がります。特に学校や職場のように人が集まる環境では、短期間で多くの人にうつる可能性があります。潜伏期間は2〜3週間と比較的長いため、気づかないうちに周囲に感染を広げてしまうこともあります。
マイコプラズマ肺炎の流行時期
マイコプラズマ感染症は4年周期で流行が大きくなる傾向があると報告されています。1年を通して発症しますが、季節的には夏から秋にかけて増えることが多く、冬場にも流行が続くケースがあります。特に集団生活をしている学童で一度流行すると、クラス全体や学年全体に広がることも珍しくありません。流行期には「咳が長く続く子どもが多い」といった地域特有の傾向がみられるため、注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎症状
初期症状
初期は風邪とよく似た症状から始まります。具体的には以下のようなものがあります。
- のどの痛みや違和感
- 頭痛
- 倦怠感
- 微熱から38℃程度の発熱
進行すると現れる症状
数日が経過すると、次第に咳が強くなり、特徴的な「乾いた咳」が長期間続くようになります。
- 痰を伴わないしつこい咳
- 夜間や早朝に悪化する咳き込み
- 胸の痛みや圧迫感
この長引く咳というのが、マイコプラズマ感染症の特徴であり、数週間にわたって続く場合も少なくありません。小児では発熱や喘鳴(ゼーゼーする呼吸音)を伴うこともあります。
子どもと大人の違い
小児では、発熱や咳が強く、喘息様の症状を伴うことがあります。学校での流行が起こりやすく、家族内感染もよく見られます。一方、大人では発熱が軽度で、咳だけが長く続くケースが多いため、気づかずに生活を続けてしまうことがあります。その結果、周囲に感染を広げる可能性も高まります。
マイコプラズマ肺炎の合併症・注意点
多くの場合は軽症ですが、ときに肺炎などの合併症を引き起こすことがあります。
- 肺炎(異型肺炎と呼ばれることもある)・胸膜炎
- 気管支炎
- 中耳炎
- 稀に心筋炎や髄膜炎・農園などの重症合併症
特に肺炎を起こすと、胸部レントゲンで特徴的な影が見られることがあり、入院が必要になることもあります。
マイコプラズマ肺炎の検査・診断方法
症状だけでは一般的な風邪やインフルエンザとの区別が難しいため、以下の検査を組み合わせて診断します。
- 胸部レントゲン検査:肺炎の有無を確認
- 血液検査:炎症の強さを評価
- 迅速検査やPCR検査:咽頭ぬぐい液から原因菌を特定
- 抗体検査:体内の免疫反応を調べる(発症から時間が経っている場合に有効)
マイコプラズマ肺炎とインフルエンザの違い(検査・診断方法)
マイコプラズマ肺炎は、インフルエンザとは、原因となる病原体の種類が異なります。インフルエンザはウイルス感染によって起こり、抗原検査やPCR検査で迅速に診断できます。一方、マイコプラズマ肺炎は細菌の一種「マイコプラズマ」によるもので、抗原検査やPCR検査、血液検査(抗体価測定)などの検査項目にて診断します。当院では、ともに迅速抗原検査を用いて診断を行っています。症状だけでは見分けにくいため、検査での確認が大切になってきます。
マイコプラズマ肺炎の治療方法
抗菌薬による治療
マイコプラズマ感染症には特定の抗菌薬が有効です。
- マクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど):小児に多く用いられる
- テトラサイクリン系(ミノサイクリンなど):中学生以上で使用可能
- ニューキノロン系:成人で耐性菌が疑われる場合に用いられる
ただし、近年ではマクロライド耐性菌が増加しており、特に小児においては初期治療で効果が見られないケースが増えてきています。耐性菌では、発熱や咳が長引き、重症化するリスクも高まるため、医師の判断で早期に薬剤変更を行うことが重要です。
対症療法
抗菌薬に加え、症状をやわらげるために以下の治療が行われます。
- 解熱薬による発熱のコントロール
- 咳止めや去痰薬で呼吸を楽にする
- 十分な水分補給と安静
マイコプラズマ肺炎の予防(ならないために)
現在、マイコプラズマ感染症に対するワクチンは存在しません。そのため、日常生活での予防が何より重要です。
- 外出時や学校・職場でのマスク着用
- 石けんやアルコールによる手洗い・手指衛生
- 咳エチケット(咳やくしゃみをするときに口を覆う)
- バランスの取れた食事と十分な睡眠による体力維持
- 流行期には人混みを避ける
マイコプラズマ肺炎は出席停止になる?
学校保健安全法では、マイコプラズマ肺炎は登校停止の指定疾患には含まれていません。しかし、咳が強く他人にうつす可能性がある場合は、症状が落ち着くまで自宅で安静にすることが望まれます。職場でも同様に、咳が続く間は無理をして出勤せず、周囲への感染を防ぐ配慮が必要です。
マイコプラズマ肺炎で受診するタイミング
以下のような症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
- 発熱が数日以上続く
- 咳が2週間以上続く、または徐々に悪化する
- 呼吸が苦しい、胸の痛みが強い
- 子どもで喘鳴(ゼーゼー音)が出ている
- 家族やクラスに同じ症状の人が複数出ている
マイコプラズマ肺炎(感染症)に関するよくある質問
マイコプラズマ肺炎と風邪の見分け方は何ですか?
風邪は喉の痛みや鼻水など軽い症状が中心ですが、マイコプラズマ肺炎では、熱や咳が長く続き、全身のだるさが強いのが特徴です。特に咳が2週間以上続く場合は、単なる風邪ではなく肺炎を疑う必要があり、肺炎の起因菌の一つにマイコプラズマが挙げられます。
マイコプラズマ肺炎は何日で治りますか?
症状の程度や治療開始のタイミングによって異なりますが、一般的には抗菌薬の内服を始めてから3~5日で熱が下がり、1~2週間ほどで全身状態が回復することがほとんどです。ただし、咳は長引くことが多く、完全に治るまでに3~4週間かかる場合もあります。この場合、自己判断で薬を中断せずに、医師の指示に従うことが大切になります。
マイコプラズマ肺炎は自然に治りますか?
軽症であれば自然に回復することもありますが、多くの場合は咳や発熱が長引きやすく、抗菌薬による治療が必要になってきます。放置すると症状が悪化し、重症化することもあるため、早めに医療機関を受診することが大切になってきます。
マイコプラズマ肺炎の症状ピークはいつですか?
発症から3~5日ほどで熱や咳が強くなり、1週間前後で症状のピークを迎えることが多いです。その後、熱は下がっても咳だけが長く残るケースが少なくありません。この場合でも、治療を継続することで徐々に咳症状は改善していきます。
マイコプラズマ肺炎の咳の特徴はありますか?
マイコプラズマ肺炎では、乾いた「コンコン」という咳が長く続くのが特徴です。痰が少なく、夜間や明け方に強く出やすいため、眠れないほど咳き込む方もいます。咳止めでは改善しにくいため、抗菌薬治療を適切に行っていく必要があります。
マイコプラズマ肺炎は必ず咳が出ますか?
多くの方に咳がみられますが、初期や軽症の場合には咳が目立たないこともあります。発熱や倦怠感のみで始まり、数日後に咳が強くなるケースもあるため、「熱が下がっても咳が長引く」ような場合には、注意が必要です。
まとめ
マイコプラズマ感染症は、特に小児や若い世代に多い呼吸器感染症であり、「咳が長引く」ことが大きな特徴です。軽症で済むことが多いものの、肺炎やその他の合併症を引き起こすこともあるため、早期に診断・治療を行うことが大切です。予防にはマスクや手洗いなどの日常的な習慣が欠かせません。学校や職場での対応、家庭での工夫も感染拡大を防ぐ重要なポイントになります。
