脂肪分の多い食生活と喘息リスクの関係
はじめに
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。日々多くの患者さんを診ていて思うことは、「食生活」が生活習慣病だけでなくて、喘息などの呼吸器疾患の症状のコントロールにも影響を与えているのではないかということです。
実は、脂肪分の多い食事は、喘息を悪化させるリスクがあることが国内外の研究からちょくちょく報告されていたりいます。そこで今回のブログでは、そのあたりのエビデンスを少し交えながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
脂肪分の多い食生活と喘息のエビデンス
脂質摂取と喘息症状の関連
オーストラリアの研究(Wood LG, Thorax 2011)では、脂肪分の多い食事をとった後、喘息患者さんの気道炎症が一時的に悪化することが示されました。具体的には、血中の好中球(炎症を起こす細胞)が増え、呼吸機能検査でも気道の反応性が上がったと報告されています。
つまり、揚げ物やファストフードを多く食べると、その直後から咳や息苦しさが強くなる可能性があるということなんです。
食生活パターンと喘息の関係
大規模な疫学研究でも、「脂肪分や加工食品が多い欧米型の食事」をしている人は、「野菜や果物、魚が中心の地中海食」をしている人に比べて喘息の有病率が高いことがわかっています。特に子どもにおいては、母親の妊娠中の脂肪摂取量と喘息リスクの関連も報告されていたりします。
日本人でも当てはまる?
「日本は魚中心だから関係ないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、近年はファストフードや揚げ物の摂取が増えているので、実際に喘息がなかなか落ち着かない方に関しても、脂分の摂取量が多い方は比較的多いのではないかと感じています。
脂肪が喘息に与えるメカニズム
炎症を助長する
脂肪分の多い食事は、体内で炎症を促す物質(サイトカイン)の分泌を増やしてしまいます。喘息は「気道の炎症」が病気の本質なので、この仕組みによって、症状の悪化に直結してしまうんです。
腸内環境の乱れ
脂肪の摂りすぎは腸内細菌のバランスを崩し、免疫の働きを偏らせてしまいます。その結果、アレルギー反応や気道の過敏性が強くということに関しても、指摘されていたりします。
注意すべき脂質と摂った方がいい脂質
注意が必要な脂質
- 飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、ラードなど):炎症を悪化させやすい
- トランス脂肪酸(マーガリン、スナック菓子、揚げ油など):アレルギーや心疾患リスクだけでなく喘息にも影響
摂った方がよい脂質
- オメガ3脂肪酸(サバ、イワシ、サンマなどの青魚に含まれるEPA・DHA):炎症を抑える作用があり、喘息コントロールに良い影響を与える可能性がある
患者さんへのアドバイス
食事はバランスが基本
「揚げ物は絶対ダメ」というわけではありません。大切なのは続けて食べ過ぎないことです。野菜や魚を取り入れ、加工食品は控えめにするといった工夫が効果的なんだと思います。
薬と生活習慣の両立
喘息は吸入薬による治療が基本ですが、生活習慣を整えることも同じように大切です。普段から吸入薬による喘息治療を受けていて、それでも症状が残っている方は、食事内容についても意識してみてもらうといいかと思います。
まとめ
脂肪分の多い食生活は、気道の炎症を引き起こし、喘息の症状を悪化させることが国内外の研究で示されています報告されていたりします。元八事ファミリー内科クリニックでは、薬物治療とあわせて生活習慣のアドバイスも行っていきたいと思います。「最近咳が続く」「食生活が影響しているかも」と思う方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
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・A high-fat challenge increases airway inflammation and impairs bronchodilator recovery in asthma. J Allergy Clin Immunol.2011 May;127(5):1133-40.
・Nutrition and respiratory health--feature review. Nutrients 2015 Mar 5;7(3):1618-43.
・Adherence to the Mediterranean diet and fresh fruit intake are associated with improved asthma control. Allergy.
2008 Jul;63(7):917-23.