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最新の肺炎球菌ワクチン「キャップバックス®(PCV21)とは?

一般内科

「キャップバックス®(PCV21)」とは?

こんにちは。名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
毎年肺炎に罹患される方は多くいますが、肺炎の中でも、特に重症化しやすいのが「肺炎球菌」による肺炎です。
今回は、2025年10月に、新しい球菌ワクチンワクチンである「キャップバックス®(PCV21)」が発売されました。
そこで今回のブログでは、「キャップバックス®(PCV21)」について、これまでのワクチンとの違いや特徴を、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。

肺炎球菌ワクチンが大切な理由

肺炎球菌は、肺炎や菌血症、髄膜炎など、命に関わる感染症を引き起こす細菌です。特に65歳以上の高齢者や、糖尿病・心疾患・慢性閉塞性肺疾患(COPD)をお持ちの方では、重症化するリスクが非常に高くなります。

日本では毎年10万人以上が肺炎で入院しており、その多くが肺炎球菌によるものです。
こうした背景から、肺炎球菌ワクチンの接種は「自分の命を守るための予防」として、非常に大切なワクチンになるんでです。

これまでの肺炎球菌ワクチンと課題

ニューモバックス®(PPSV23)

もっとも古くから使われているワクチンで、23種類の肺炎球菌に対応しています。
広範囲をカバーできる反面、「免疫の持続が短い」「免疫記憶(体が覚える力)が弱い」という課題があり、数年で効果が弱まる傾向がありました。

プレベナー®(PCV13・PCV20)やバクニュバンス®(PCV15)

これらは「結合型ワクチン」と呼ばれ、免疫記憶をしっかり作れる点が特徴です。
ただし、対象とする血清型(菌の型)が限定的で、重症化しやすい型を十分カバーできていないケースもありました。
また、従来は「結合型ワクチン+多糖体ワクチン」を2回に分けて接種する必要があり、スケジュールが複雑なのも課題の一つでした。

新登場「キャップバックス®(PCV21)」の特徴

① 世界最多の21種類の血清型に対応

キャップバックス®は、MSD社が開発した「21価肺炎球菌結合型ワクチン」で、これまでのワクチンではカバーできなかった型(たとえば「15A」「16F」「23A」など)も新たに含んでいます。
成人の重症肺炎や菌血症で多い型をしっかり網羅できるよう設計されており、「これまでのワクチンでは防ぎきれなかった肺炎にも対応」できるのが大きな特徴の一つです。

② 1回の接種で完結

これまでのように「2種類のワクチンを別々に接種する」必要がなく、キャップバックス®は1回接種で予防が完結するといわれています。
なので、複雑なスケジュールが不要になり、忙しい方や高齢者でも受けやすくなりました。

アメリカCDC(疾病対策センター)でも、2025年の最新ガイドラインで、50歳以上のワクチン未接種者にはPCV21の単回接種を推奨しています。

③ 長期間続く免疫効果

キャップバックス®は「結合型ワクチン」です。これは、免疫細胞の中でも“T細胞”という記憶をつくる細胞を活性化する仕組みを持っています。
そのため、単なる抗体を作るだけでなく、体がしっかり「覚える」ことで、免疫が長持ちするのが特徴です。
実際に、他の結合型ワクチンと比べても長期的な効果が期待されています。

 

ニューモバックス・プレベナーとの比較

キャップバックス®は、ニューモバックスの「広さ」とプレベナーの「免疫の強さ」を兼ね備えた、まさに“いいとこ取り”のワクチンです。

どんな方におすすめ?

・65歳以上の高齢者
・糖尿病や心疾患、肺疾患(COPD・喘息)などをお持ちの方
・過去にニューモバックス®やプレベナー®を接種したが、1年以上経過している方

これらの方は、キャップバックス®を1回接種することで、より広く・長く肺炎を予防できます。
特に、過去の接種から1年以上経過していれば追加接種が可能です。

当院での接種について

当院(元八事ファミリー内科クリニック)では、2025年11月よりキャップバックス®の接種を開始しています。
費用は税込14,000円で、原則として予約制にしています。

当院としては、

①65歳以上、または基礎疾患のある方には、まずニューモバックス®(PPSV23)を公費で接種。
②すでにニューモバックスを接種されている場合には、1年以上経過した段階でキャップバックス®(PCV21)を追加接種することを推奨
③キャップバックス®を接種された方は、以後のニューモバックス5年ごとの再接種は不要

このように考えています。

まとめ:
キャップバックス®で、より確かな肺炎予防を

キャップバックス®(PCV21)は、これまでのワクチンでは防げなかった型にも対応し、1回の接種でしっかり予防できる最新の肺炎球菌ワクチンです。
「前にワクチンを打ったけど、もう数年経っている」「どれを打てばいいかわからない」という方も、ぜひ一度ご相談ください。