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ハウスダスト・ダニと喘息の深い関係:家庭でできる予防の工夫とは?

喘息・長引く咳

喘息は、「気道(空気の通り道)が、主にアレルギーに関連した炎症を起こして、敏感になってしまう病気」です。息をするときに咳が止まらなかったり、ゼーゼー・ヒューヒューという音(喘鳴)が出たり、夜や早朝に苦しくなること、などの症状があります。発作のきっかけには色々な要因がありますが、特に家庭内の“ハウスダスト”や“ダニ”が重要な原因であることが多いのです。

国際的な研究(Platts-Millsら, 1997/Custovicら, 1998)では、ダニのアレルゲンが一定量を超えると、喘息のリスクが大きく高まることが示されており、日本の住環境でも、大きな問題として考えていくべき問題なんです。そこで今回は、今日からできるハウスダスト・ダニ対策について、ご紹介していきたいと思います。

ハウスダストとは?その正体

「ハウスダスト」とは、単なるホコリではありません。衣類や布団から出る繊維、髪の毛やフケ、食べかす、花粉、カビの胞子、ペットの毛、そしてダニの死骸やフンなどが混ざり合った、細かい粒子の集合体なんです。肉眼では見えにくいものの、空気中に舞いやすく、吸い込むことで気道に炎症を起こしやすいので、注意が必要なんです。

ダニと喘息:なぜこんなに影響が大きいのか?

ダニの好む環境

ダニは高温多湿を好み、布団・カーペット・ソファ・ぬいぐるみといった「布製品」に多く潜みます。日本は湿度が高いため、残念ながら、ダニが繁殖しやすい環境といえます。

ダニのアレルゲンが喘息を悪化させる仕組み

ダニのフンや死骸のかけらは、非常に小さいため、簡単に空気中に舞い上がります。そして、これを吸い込むと、体の免疫システムが「異物」と認識してしまい、IgE抗体を介したアレルギー反応を起こしてしまいます。その結果、気道が腫れたり、粘液が増えたりして、咳や息苦しさが出やすくなってしまうんです。特に、喘息を持つ人は、気道がすでに敏感な状態になっているため、ダニへの暴露が喘息発作の引き金になりやすいことが知られています。

研究が示す「環境整備」の効果

「掃除しても意味がないのでは?」と思う方もいますが、過去の研究では、室内のダニ量を減らすことで、喘息の症状が軽くなることが報告されています。特に布団・シーツを高温で洗濯・乾燥させる、カーペットを減らすなどの対策は、実際に効果的だと思います。

今日からできる具体的な対策

1. 布団・シーツの管理

50℃以上のお湯で洗濯、または乾燥機で高温乾燥すると、ダニは死滅するそうです。その後、掃除機で死骸やフンをしっかり吸い取ることが大切です。防ダニカバーの使用も有効です。

2. 室内の湿度をコントロール

ダニは湿度60%以上で繁殖が加速します。除湿機やエアコンを使い、室内を40〜50%程度に保つとダニの数を抑えられます。

3. カーペットや布製ソファの工夫

カーペットは、ダニの温床になりやすいので、可能であれば撤去をすることも検討してみてください。難しい場合には、スチーム清掃と吸引を定期的に行っていくのがいいかと思います。

4. 空気清浄機の活用

HEPAフィルター付きの空気清浄機は、掃除中や就寝中に舞い上がるダニアレルゲンを減らすのに、とても効果的です。

5. ぬいぐるみやカーテン

洗濯機で洗えるぬいぐるみは定期的に洗い、高温乾燥機にかけることも検討してみてください。カーテンも定期的に洗うことで、ダニやハウスダストを減らせます。

薬物治療と環境整備の両輪が大切

喘息治療の基本は、吸入ステロイド薬を中心とした薬物療法ですが、それだけでは十分でない場合があります。環境整備によって、ダニやハウスダストを減らすと、薬の効果が高まり、発作の回数も減らせることが期待できます。特にお子さんの喘息管理では、ご家庭全体での取り組みが大切になってくるんです。

まとめ

  • ハウスダストの中でもダニ由来のアレルゲンは、喘息の発症・悪化に大きく関わっている。
  • 研究により、ダニ対策が喘息症状の改善につながることが確認されている。
  • 寝具の管理・湿度調整・清掃習慣を中心に取り組むことが、効果的な予防につながる。
  • 薬物療法と併せて生活環境を整えることで、より安定した喘息コントロールが可能になる。

家庭に潜む「見えない敵」であるダニやハウスダストを正しく理解し、日々の生活に少し工夫を取り入れることで、喘息とよりうまく付き合うことができます。

参考文献

  • Platts-Mills TAE, Vervloet D, Thomas WR, Aalberse RC, Chapman MD. Indoor allergens and asthma: report of the Third International Workshop. J Allergy Clin Immunol. 1997;100(6 Pt 1):S2-24.
  • Custovic A, et al. The role of inhalant allergens in allergic diseases. J Allergy Clin Immunol. 1998;101(6 Pt 1):S364-9.