インフルエンザやコロナにかかったらワクチンは打つ必要がなくなる?
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。みなさんは、「一度インフルエンザやコロナにかかったから、もうワクチンは打たなくてもいい?」ということを考えたりしたことはありますか?これは、多くの人が疑問に思うことが多いと思いますし、実際に外来でも毎年頻繁に聞かれる疑問なので、今回はその点についてできるだけわかりやすく解説していきます。
かかったからといって一生免疫がつくわけではない
まず一番大切なことは、インフルエンザや新型コロナウイルスに一度かかったとしても、その免疫が一生続くわけではない、という点です。多くの患者さんは「かかったから体に抗体(免疫の防御システム)ができて、もう安心」と思われるのですが、実際には時間とともにその効果は薄れていきます。
特にインフルエンザは、毎年ウイルスの型(種類)が変わるため、去年かかった方でも今年は違う型のインフルエンザに感染してしまうことがよくあるんです。外来でも「去年かかったから安心だと思ったのに、またかかってしまった」という患者さんをよく診ます。
新型コロナの免疫も時間とともに弱まる
新型コロナウイルスも同じです。感染後に一時的に免疫はつきますが、数か月経つとその効果は落ちていきます。また、コロナは変異株が次々と出てきます。「オミクロン株にかかったから大丈夫」というわけではなく、その後に流行した別の株には再び感染してしまう可能性があります。実際、私の外来でも「去年コロナにかかったのに、また別の株で陽性になった」という患者さんも、実は少なくないんです。
ワクチンの役割は「重症化を防ぐ」こと
ここで大事なのは、ワクチンには「感染を完全に防ぐ」力はないけれど、「重症化を防ぐ」効果があるということです。これはインフルエンザもコロナも共通しています。つまり、一度かかった人でも、再び感染したときに症状を軽く抑えるためにワクチンは役立つんです。
臨床でよく感じるのは、特に高齢の方や持病をお持ちの方がワクチンを受けているかどうかで、入院のリスクが大きく変わるということです。ワクチンを受けずに感染すると重症化し、肺炎や呼吸不全まで進んでしまうケースもあります。一方、接種していた方は、軽症で済むケースが多いです。
よくある患者さんの声と私の答え
「去年かかったから、今年は打たなくてもいいですよね?」
→ いいえ。インフルエンザに関しては毎年流行する株が変わるため、毎年接種することが大切です。
「ワクチンを打ってもかかると聞いたのですが…」
→ 確かに、ワクチンを打っていてもかかってしまうことはあるかと思います。しかしながら、ワクチンを打つことによって重症化を防ぎ、回復も早くなる傾向があります。なので、ワクチンは打ったほうがいいんです。
「副作用が怖いのですが…」
→ 注射部位の腫れやだるさなど軽い副反応はありますが数日でおさまります。重い副作用は非常にまれで、感染して重症化するリスクの方がずっと大きいです。
ワクチン接種が特に大切な人
外来を診ていて「この方は特に接種してほしい」と感じるのは以下のような方です。
- 65歳以上の高齢者
- 糖尿病や高血圧、心臓病、腎臓病などの生活習慣病をお持ちの方
- 喘息やCOPDなど呼吸器の病気をお持ちの方
- 免疫力が低下している方
- 医療・介護職など、人と接する機会が多い方
「もうかかったから大丈夫」と思わずに相談を
インフルエンザやコロナに一度かかった方でも、新しい株や次のシーズンに再びかかることはあります。「もうかかったから安心」ではなく、その年ごとに予防接種の接種を考えてみてほしいんです。
まとめ
インフルエンザや新型コロナに一度かかったからといって、ワクチンが不要になるわけではありません。免疫は時間とともに弱まり、ウイルスは毎年変化します。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化を防ぐ大切な役割があります。特に高齢の方や持病をお持ちの方には、ワクチン接種をおすすめします。「かかったから大丈夫」ではなく「かかったことがあるからこそ、次に備える」という気持ちで、予防接種を検討してみてください。
