睡眠時無呼吸症候群と心臓・血管の病気(循環器疾患)との関係性
睡眠時無呼吸症候群は
心臓・血管の病気と深く結びついた全身疾患です
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
睡眠時無呼吸症候群は、文字どおり「寝ている間」に呼吸が止まってしまう病気です。そのため
「寝ているときのことなのに、そこまで体に影響するんですか?」
と疑問に思われる方も多いと思います。
ですが、実は睡眠時無呼吸症候群というのは、心臓であったり血管の病気と深く関連していることがわかっています。なので、睡眠時無呼吸症候群を放置しておくことは、将来的な心臓・血管疾患のリスクを高めてしまうことにもつながるんです。
そこで今回のブログでは、睡眠時無呼吸症候群が体の中で何を引き起こし、なぜ心臓や血管の病気につながっていくのかを、医学的エビデンスをもとに、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)で
体に何が起きているのか
睡眠時無呼吸症候群の中で最も多いのが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。
OSAでは、睡眠中に上気道(鼻から喉の空気の通り道)が閉塞し、10秒以上の無呼吸や低呼吸が繰り返されます。
Peppardらの疫学研究では、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が高いほど、夜間の酸素飽和度低下と交感神経活性の上昇が強くなることが示されています【1】。
この結果、睡眠中にもかかわらず
- 血圧が急上昇する
- 心拍数が増加する
- 交感神経が過剰に刺激される
という状態が一晩中続いてしまうんです。 本来「休む時間」である睡眠が、心臓と血管にとっては負荷の時間になってしまうんです。
【参考文献】
1) Peppard PE et al. N Engl J Med. 2000;342:1378-1384.
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の
明確な因果関係とは?
OSAと高血圧の関連は、数多くの臨床研究で確認されています。
Loganらの研究では、治療抵抗性高血圧(3剤以上の降圧薬を使用)患者の約83%にOSAを合併していたと報告されています【2】。
またSilverbergらの研究では、OSA患者では夜間血圧が低下しない「non-dipper型高血圧」が有意に多いことが示されました【3】。
これはつまり、
- 薬を増やしても血圧が下がらない
- 朝の血圧が高い
といった状態の背景に、睡眠中の無呼吸による血圧上昇が隠れている可能性が高い、ということです。
【参考文献】
2) Logan AG et al. J Hypertens. 2001;19:2271-2277.
3) Silverberg DS et al. Am J Hypertens. 1997;10:1319-1325.
心不全・心肥大との関連
OSAによる慢性的な低酸素状態と血圧変動は、心臓の構造そのものを変化させます。
Smithらの報告では、OSA患者において左室肥大(心臓の筋肉が厚くなる)が有意に多いことが示されました【4】。
左室肥大は、将来的な心不全・突然死リスクの独立した危険因子です。
「息切れが年齢のせいだと思っていたら、実は睡眠中に心臓が追い込まれていた」 これは、決して珍しい話ではないんです。
【参考文献】
4) Smith R et al. Chest. 2002;121:164-172.
心房細動など不整脈との強い関連
OSAは心房細動の最も重要な修正可能リスク因子の一つと考えられています。
メタ解析では、OSAを有する患者は、OSAのない患者に比べ心房細動の発症リスクが約2〜4倍高いと報告されています【5】。
さらに、CPAP治療を行わなかったOSA患者では、心房細動の再発率が有意に高いことも示されています。
【参考文献】
5) Gami AS et al. Circulation. 2004;110:364-367.
大動脈瘤・大動脈解離との関係
OSAでは、血圧変動・酸化ストレス・慢性炎症が繰り返されます。
McNamaraらは、OSA患者で大動脈壁の拡張と脆弱化が進行しやすいことを報告しました【6】。
自覚症状が出にくいため、気づいたときには重篤な状態になっていることもあります。
【参考文献】
6) McNamara SG et al. Lung Biology in Health and Disease. 1994.
CPAP治療がもたらす医学的に証明された効果
CPAP治療により、
- 夜間・日中血圧の低下
- 心不全増悪の抑制
- 心房細動再発率の低下
といった効果が示されています。
CPAPは「いびきを止める治療」ではありません。 心臓と血管を守る、大切な治療なんです。
元八事ファミリー内科クリニックからのメッセージ
元八事ファミリー内科クリニックでは、いびきや日中の眠気、その背景にある睡眠時無呼吸症候群について、検査から治療まで積極的に診療を行っています。
「いびきが気になる」「昼間にどうしても眠くなる」「寝ている間の無呼吸を指摘された」など、少しでも心当たりがあれば、名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックまで、どうぞ気軽にご相談ください。
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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