RSウイルスワクチンの違い|アレックスビーとアブリスボは何が違う?
RSウイルスワクチンの違い|
アレックスビーとアブリスボは何が違う?
RSウイルスとは?
高齢者と赤ちゃんで意味が違う感染症
RSウイルスは、乳幼児の細気管支炎(細い気道が腫れる病気)や肺炎の原因として知られています。
一方で、高齢者では肺炎や呼吸不全の原因にもなります。
実際、NEJMという論文では、RSウイルスは高齢者の入院原因として無視できない存在であることが示されています。
Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults.
つまり、
- 高齢者を守るワクチン
- 赤ちゃんを守るための妊婦ワクチン
この2つが存在するんです。
アレックスビーとアブリスボの基本的な違い
■ アレックスビー(高齢者向け)
GSK社製。
60歳以上が対象です。
最大の特徴はAS01Eというアジュバント(免疫を強くする補助成分)が含まれていること。
高齢になると免疫の反応が弱くなります。
そのため、あえて免疫を強く刺激する設計になっています。
Real-world evidence on RSV vaccine uptake, effectiveness, and safety in older adults: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Reg Health Eur. 2026 Feb 20:64:101623.
こちらの論文においても、高齢者において高い予防効果が報告されています。
■ アブリスボ(妊婦・高齢者)
ファイザー社製。
60歳以上に加え、妊娠24~36週の妊婦にも使用できます。
こちらはアジュバントなし。
純粋な抗原タンパクのみで免疫を誘導します。
NEJM 2023では、妊婦接種により出生後の乳児RS入院が有意に減少したことが示されています。
Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants.
N Engl J Med. 2023 Apr 20;388(16):1451-1464.
なぜ妊婦用にはアジュバントが入っていないのか?
「免疫をつけすぎると妊娠に悪いのですか?」
と聞かれることがあります。
ここはとても大事なポイントなんです。
免疫が強すぎるから危険、という単純な話ではない
「免疫を強くしすぎると危険」という、単純な構図ではありません。
妊娠中の体は、お腹の赤ちゃんを受け入れるために、免疫の働きが絶妙なバランスに保たれています。強すぎず、弱すぎず。その繊細な調整の上に妊娠は成り立っています。
だからといって、ワクチン接種が流産を引き起こすという科学的な証拠は確認されていません。
実際に、インフルエンザワクチンなどは、母体と赤ちゃんを守る目的で世界的に推奨され、広く接種されています。
ポイントは「炎症反応」
アジュバントは免疫を強くする代わりに、炎症反応も強くします。
発熱や全身反応が出やすくなる可能性があります。
妊婦ワクチンの目的は、 母体を強く守ることではなく、胎盤を通じて赤ちゃんに抗体を届けること。
必要なのは、強烈な免疫ではなく「十分な中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)」なんです。
そのため、アジュバントを使わなくても目的を達成できる設計が選ばれています。
つまり、
- 免疫をつけすぎると危険だから、ではないが、妊娠中は炎症を最小限に抑える安全設計を優先している
ということなんです。
RSワクチンのよくある質問
■ 「妊婦ワクチンは弱いワクチン?」
目的が違うだけです。
母体の免疫を使って赤ちゃんを守る、という目的で作られたワクチンです。
■ 「高齢者はどちらがいいの?」
免疫をしっかり上げたい方はアレックスビー。
副反応をできるだけ抑えたい方はアブリスボ。
基礎疾患や体力によって選び方は変わってくるかと思います。
RSウイルスワクチンの受診の目安
・60歳以上の方
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息など、慢性の呼吸器疾患をお持ちの方
・心疾患や糖尿病など、基礎疾患のある方
・妊娠後期(妊娠24~36週)に入られた妊婦の方
これらに当てはまる方は、RSウイルスワクチンの対象となる可能性があります。少しでも気になったら、一度ご相談いただければと思います。
最後に
RSウイルスワクチンには、
- アジュバントありで高齢者の免疫を底上げするアレックスビー
- 炎症を抑え、安全性を重視した妊婦対応のアブリスボ
という明確な違いがあります。
どちらが優れているかではなく、対象となる患者が違う、ということになります。
元八事ファミリー内科クリニックでは、RSウイルスワクチンをはじめ、各種ワクチンにも対応しています。
ワクチン接種をご希望の際には、一度名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックまで、ご相談いただければと思います。
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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