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喘息と逆流性食道炎の意外な関係

喘息・長引く咳

喘息の治療をしているのに咳が止まらない?
逆流性食道炎との意外な関係

こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。

「吸入は続けているのに、咳だけが残るんです」
「夜になると咳が出て、なかなか眠れなくて…」

喘息の治療をきちんと行っていても、咳だけが長引く。
吸入ステロイドや気管支拡張薬で気道の炎症は落ち着いているはずなのに、なぜかスッキリしない。

そんなとき、私たち呼吸器専門医が必ず頭に浮かべる原因があります。

それが、逆流性食道炎(GERD)です。

「胃の病気と咳が関係あるの?」
そう感じる方も多いと思います。

でも実は、喘息と逆流性食道炎は切り離して考えられないほど、密接に関わっているんです。

そこで今回のブログでは、喘息の治療を続けているのに咳が止まらない…そんなときに見落とされがちな、逆流性食道炎との関係について、わかりやすく書いてみたいと思います。

 
 

喘息とはどんな病気か

喘息は、空気の通り道である気道(肺へ空気が入る通り道)に慢性的なアレルギー性の炎症が起こる病気です。

気道の炎症が続くと、気道がとても敏感になります。
すると、ちょっとした刺激でも症状が出ます。

例えば

  • 冷たい空気
  • 花粉
  • ハウスダスト
  • 風邪
  • ストレス
  • タバコの煙

こうした刺激で気道が反応し、

  • ゼーゼーする呼吸(喘鳴)
  • 息苦しさ
  • 胸の圧迫感

といった症状が出ます。

喘息の治療の中心は吸入ステロイドです。
これは気道の炎症をしっかり抑える薬です。

きちんと治療を続ければ、多くの患者さんで症状は安定します。

しかし、

  • 吸入をしているのに咳が続く
  • 夜間の咳が止まらない
  • 横になると咳が出る

こうしたケースも実際には多く、その場合みは喘息以外の要因も疑う必要があります。

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎とは、
胃酸が食道へ逆流する病気です。

胃と食道の境目には、
下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)
という筋肉があります。

これは「胃のフタ」のような役割をしています。
通常は閉じていて、胃酸が上がってこないように守っています。

しかし次のような要因で、このフタがゆるむことがあります。

  • 加齢
  • 食べすぎ
  • 肥満
  • 食後すぐ横になる習慣
  • 腹圧が上がる姿勢

すると胃酸が食道に逆流します。

よく知られている症状は

  • 胸焼け
  • 呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)

ですが、実はそれだけではありません。

次の症状だけで現れることもあります。

  • 慢性的な咳
  • 喉の違和感
  • 声枯れ
  • 喉のイガイガ

つまり、胸焼けがなくても逆流は起きていることがあるということです。

喘息と逆流性食道炎はなぜ関係するのか

① 胃酸が気道を刺激する

胃酸が食道に逆流すると、その刺激が迷走神経という神経を通して気道へ伝わります。

すると気道が過敏になり、咳が出やすくなります。

さらに微量の胃酸が気道へ入る微小誤嚥(びしょうごえん)が起きると、直接気道を刺激します。

その結果

  • 夜間の咳
  • 横になると出る咳
  • 朝方の咳

こうした症状が出やすくなります。

② 咳が逆流を悪化させる

逆に、喘息の咳も逆流を悪化させます。

強い咳が続くと腹圧が上がります。
すると胃の内容物が押し上げられます。

つまり

咳 → 逆流 → 咳

という悪循環が起きてしまうんです。

③ 喘息患者では逆流が多い

喘息患者の約30〜80%に逆流性食道炎があると報告されています。

代表的な研究として

Field SK et al.
“Prevalence of gastroesophageal reflux symptoms in asthma.”
Chest. 1996 Feb;109(2):316-22.


この研究では、喘息患者の約3分の1以上に逆流症状が見られました。

逆流を治療すると咳は改善するのか

逆流が原因の咳では、胃酸を抑える治療で咳が改善することがあります。

よく使う薬が

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬)

です。
これは胃酸の分泌を強力に抑える薬です。

代表的な研究があります。

Effects of esomeprazole 40 mg twice daily on asthma: a randomized placebo-controlled trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2006 May 15;173(10):1091-7.

 

この研究では、逆流を伴う喘息患者で、PPI治療により咳や夜間症状の改善がみられました。

ただし重要なのは、
逆流を治療しても喘息薬をやめてはいけないという点です。

喘息は慢性的な炎症の病気。
症状が落ち着いているのは薬が効いているから、ということも多いからです。

こんな症状があれば逆流性食道炎を疑う

喘息の患者さんで、次の症状がある場合は逆流の関与を疑います。

  • 横になると咳が出る
  • 夜中の咳が多い
  • 朝方の咳が強い
  • 食後に咳が出る
  • 喉の違和感
  • 声枯れ
  • 胸焼け

特に夜間寝るときに横になると出てくる咳はヒントになることが多い症状なんです。

自分でできる逆流対策

逆流は生活習慣の影響を強く受けます。
なので、次の対策はとても大切になってきます。

  • 食後すぐ横にならない
  • 就寝2〜3時間前は食事を控える
  • 食べすぎない
  • 体重管理
  • ベッドの頭側を少し高くする

こうした生活習慣の見直しだけでも咳が減ることがあります。

咳が長引くときは
原因を一つに決めつけないことも大切です

長引く咳の原因は一つとは限りません。

実際の診療では

  • 喘息または咳喘息
  • 後鼻漏(鼻水が喉に落ちる状態)
  • 逆流性食道炎

これらが重なっているケースもよくあります。

咳という症状は、実はとても複雑な症状なんです。

咳が続くときは呼吸器専門医へ

咳が長引くと、「また風邪かな」「体質だから仕方ない」と思って、そのまま様子を見てしまう方は少なくありません。

ただ、咳には必ず何かしらの原因があります。原因を一つずつ整理していくことで、症状が落ち着いていくケースも多いんです。

名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックでは、呼吸器専門医として、喘息、咳喘息、長引く咳、アレルギー疾患を中心に診療を行っています。

咳が長引く場合、喘息があるけどコントロールが今一つの場合には、一度元八事ファミリー内科クリニックまでご相談ください。

記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)

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