子どもの頃の喘息、大人になって再発する理由
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
当院では、喘息の診療に日々多く携わっています。大人になって初めて喘息と診断される方もいらっしゃいますが、それと同じくらい多いのが、「子どもの頃に喘息があった」という方です。
なかには、こんなお話をされる方も少なくありません。
「小さいころは喘息だったけれど、いつの間にか治っていました」
「最近になって、また咳や息苦しさが出てきたんです」
また、咳の相談で来院される方の中には、
「風邪はもう治ったはずなのに、咳だけ残るんです」
「夜中に咳が出て、目が覚めることが増えました」
このように、咳だけが長く続いて困っている方も多くいらっしゃいます。
子どもの頃の喘息は、成長とともに症状が落ち着くことがよくあります。ただし、「体質そのもの」が完全に消えるとは限りません。実際の研究では、小児喘息が一度落ち着いた人のうち、およそ30%が成人になってから再び症状を経験すると報告されています。
そこで今回のブログでは、
子どもの頃の喘息が、なぜ大人になって再発することがあるのか。
そして、どんな症状に気づいたら注意したほうがよいのか。
このような点について、少し書いてみたいと思います。
喘息とはどんな病気?
喘息というと「ゼーゼーする発作」を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし医学的に見ると、喘息の本体は空気の通り道(気道)の慢性的なアレルギー性の炎症なんです。
症状がない時でも、気管支の内側では炎症が続いています。
この炎症によって、気道には次のような変化が起きます。
気道で起きる3つの変化
喘息では、気管支(空気の通り道)の中で慢性的な炎症が続いています。
この炎症を背景に、気道では主に次の3つの変化が起こります。
① 気管支の収縮(気管支の筋肉が縮み、空気の通り道が狭くなる)
② 痰の増加(粘液が増えて気道にたまりやすくなる)
③ 気道過敏性(わずかな刺激でも気管支が反応しやすい状態になる)
こうした変化が重なることで、
・夜間や明け方に出る咳
・ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音
・息苦しさ
・風邪のあとに長く続く咳
といった症状が現れます。
子どもの喘息が大人で再発する理由
子どもの頃に症状が落ち着いた喘息でも、大人になって再び症状が現れることがあります。
その背景にある大きな要因の一つが、気道過敏性(気管支が刺激に反応しやすい体質)が残っていることです。
見た目には症状が消えていても、気管支そのものが刺激に敏感な状態のまま残っている場合があります。つまり、症状は落ち着いていても、気管支は完全に元の状態に戻っているとは限らないのです。
そのため、風邪などの呼吸器感染症、ストレス、生活環境の変化、花粉やハウスダストなどの刺激が重なると、気道の炎症が再び強まり、咳や喘鳴(ゼーゼーする呼吸)といった症状が現れることがあるんです。
再発のきっかけになりやすいもの
風邪やインフルエンザなどの感染症- 花粉やハウスダスト
- タバコの煙
- 強いストレス
- 過労・睡眠不足
- 引っ越しや職場環境の変化
- PM2.5などの大気汚染
とくに多いのが風邪のあとに咳だけ続くパターンです。
「風邪の咳が長引いているだけ」と思っていたら、実は喘息だった。これは珍しい話ではありません。
大人の喘息は気づきにくい
子どもの喘息はゼーゼーする発作が目立ちます。ところが大人の喘息は、症状の出方が少し違います。

大人の喘息に多い症状
- 咳だけ続く
- 夜中や朝方に咳が出る
- 季節の変わり目に咳が悪化
- 運動すると咳が出る
- 風邪のあと咳が1か月以上続く
このように、咳が主な症状になるタイプの喘息も少なくありません。いわゆる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった典型的な喘鳴が目立たないことも比較的多いんです。
そのため、本人も周囲も「風邪が長引いているだけ」と受け止めてしまい、医療機関への受診が遅れてしまっているケースが、実際の外来でもよく見られます。
放置すると起きる「気道リモデリング」
喘息で注意したいのが、炎症が長く続いた場合に起こる気道リモデリングという現象です。

これは、気管支の炎症が慢性的に続くことで、気道の構造そのものが変化してしまう状態を指します。
具体的には、
・気道の壁が厚くなる
・気管支の筋肉が大きくなる
・気道が硬くなり、狭くなる
といった変化が少しずつ進んでいきます。
問題は、この変化が進むと元の健康な状態に戻りにくくなる点です。
その結果、
・薬の効果が出にくくなる
・発作が起きやすくなる
・息切れが残りやすくなる
といった状態につながることがあります。
だからこそ、症状が軽いうちに治療を始め、気道の炎症をしっかり抑えていくことがとても大切なんです。
こんな症状があれば一度相談を
次のような症状があれば、喘息の可能性があります。
- 風邪のあと咳が3週間以上続く
- 夜中や明け方の咳
- 春や秋に咳が出る
- 会話や運動で咳が出る
- ゼーゼーする呼吸
子どもの頃に喘息があった方なら、なおさら注意が必要です。
最後に
咳が長く続く患者さんを診察していると、
「そういえば昔、喘息と言われたことがあります」
と話される方が少なくありません。
咳という症状はとても身近で、多くの人が経験するものです。だからこそ、「風邪の名残かな」と見過ごされてしまうこともあります。けれど、その咳の背景に別の原因が隠れていることもあり、症状が続く場合には丁寧に原因を見ていくことが大切なんです。
名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックでは、喘息や長引く咳の診療にも力を入れています。
「風邪は治ったのに咳だけ残る」
「夜になると咳が出てしまう」
こうした症状が続くときには、単なる風邪ではなく喘息が関係していることもあります。
咳が長引くときや、喘息が気になる症状があるときは、ぜひ一度ご相談ください。
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
院長のプロフィールはこちらから
