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インフルエンザにかかりやすい人の特徴が明らかに?

一般内科

こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。

今年は例年より早くインフルエンザの流行が始まり、当院のところにも多くの発熱患者が来院するようになってきています。ここ1週間で特に多いのは、インフルエンザA型です。そんな中、2025年8月に Scientific Reports に発表された弘前大学・京都大学・大正製薬の共同研究(Terada A. ら)は、健康ビッグデータを用いて「インフルエンザにかかりやすい人」の特徴を明らかにしました。最近Yahooニュースにも取り上げられて、注目を集めましたね。
そこで今回のブログでは、その主要な知見について、分かりやすく解説し、タイプ別の実践的な予防法についてもお伝えしていきたいと思います。

今回注目した論文

Terada A., et al.Scientific Reports volume 15, Article number: 30721 (2025) .
Network analysis reveals causal relationships among individual background risk factors leading to influenza susceptibility

研究の概要:
大規模データとベイジアンネットワーク解析

弘前大学が実施する「岩木健康増進プロジェクト健診(IHPP)」の約1,000名分のデータ(血液検査・生活習慣・既往歴・体組成など3,000項目以上)から、AIでインフルエンザ発症に関連する165項目を抽出。さらに ベイジアンネットワーク解析 を用いて、要因同士の「原因→結果」の関係を推定しています。単なる相関ではなく因果の流れを可視化できた点が、この論文の大きな特徴です。

分かったこと:
5つの「インフルエンザにかかりやすいタイプ」

解析の結果、以下の5つのタイプがインフルエンザ発症と関連していることが分かりました。

① 血糖が高めタイプ

グリコアルブミンやペントシジンなどの血糖関連指標が高い方は、免疫細胞の働きが鈍くなる傾向があり、ウイルスに対する抵抗力が低下します。糖代謝のコントロールが大切になってくるということがいえるかと思います。

② 肺炎の既往があるタイプ

過去に肺炎を経験した人はもともと呼吸器の感染に対しての抵抗力が低下している場合があると考えられ、インフルエンザに対してもかかりやすくなると考えられます。

③ 多忙・睡眠不足タイプ

慢性的な睡眠不足や多忙な生活は、免疫機能を低下させてしまうことがわかっています。この研究でも「睡眠不足が風邪の罹患頻度を高める」という報告があり、睡眠の質を改善させると感染予防にも直結することが示唆されています。

補足:いびきや日中の強い眠気がある場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。当院では自宅でできる簡易検査を行っており、積極的に睡眠時無呼吸症候群の治療を行っています。

④ 栄養不良タイプ

野菜不足や偏った食事は、粘膜の防御力を弱めてしまいます。特に緑黄色野菜や良質なたんぱく質の摂取は、粘膜・免疫を支えるうえで大切になってきます。

⑤ アレルギー体質タイプ

スギや雑草、ダニなどのアレルギー反応が強い方は、慢性的な鼻づまりや炎症が呼吸器のバリア機能を低下させ、ウイルス侵入のハードルを下げる可能性があります。当院では、スギ花粉やダニアレルギーに対して、積極的に舌下免疫療法を行って、免疫体質の改善を目指した治療を行っています。

要注意:
複数の要因が重なるとリスクは大幅に上昇

特に「血糖が高め」「肺炎既往」「睡眠不足」といった複数の特徴が重なったグループでは、インフルエンザ発症リスクが約 3.6倍 に上昇することがこの論文で示されています。単独の要因だけでなく、複合的な健康状態の把握が大切になってくるということがいえるかと思います。

医師の視点:
5タイプ別に実践できる具体的対策

血糖が高めタイプ — 日常でできる工夫

  • 食事での炭水化物を一度に摂りすぎないことが大切です
  • 間食を控え、規則正しい食事を心がけるようにしてみてください
  • 食事の最初に野菜を摂る(ベジファースト)と、血糖値の急激な上昇を抑えることができるようになります
  • 定期的な体重管理と適度な運動も、とても大切なことです

肺炎既往タイプ — 早めのワクチンと受診を

  • 毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨します
  • 必要に応じて肺炎球菌ワクチンも検討してもらうといいと思います。当院では、新しく採用となったキャップバックスという肺炎球菌ワクチンをお勧めしています。
  • 風邪症状や高熱時は、早めに当院へ受診してもらうことも大切になってきます

多忙・睡眠不足タイプ — 睡眠の質を整える

  • 就寝時間をできるだけ固定することが、安定した睡眠の質を確保するためには大切です
  • カフェイン・スマホは良質な睡眠を妨げるため、睡眠2時間前からは利用を控えることも大切になってきます。
  • いびきや強い日中の眠気がある方は、一度睡眠時無呼吸の検査を検討してみてください

栄養不良タイプ — 食事の見直しを

  • 1日あたり350g程度の野菜摂取を目標にしてみてください
  • 良質なたんぱく質(魚・肉・大豆類)を意識的に摂ることも大切なことです
  • 加工食品に偏らないバランスの良い食事を意識してみてください

アレルギー体質タイプ — 炎症をコントロール

  • 慢性的な鼻づまりを放置しないで、抗アレルギー薬や点鼻薬で治療をしていくようにしましょう
  • 慢性的なアレルギー症状がある場合には、一度当院へ相談しに来てみてください。

当院でできること(診療のご案内)

当院では、上記のうち特に 睡眠評価(SAS簡易検査)、生活習慣(血糖・糖尿病管理・栄養相談)のアドバイスや、アレルギーに関する初期評価を行っています。ご希望の方にはワクチン接種のご案内や、症状に応じた早めの診察を行い、重症化の予防に努めていきたいと思っています。

まとめ:自分の「タイプ」を知って、的確な対策を

今回取り上げた論文の大規模解析においては、インフルエンザのかかりやすさが「血糖」「肺の状態」「睡眠」「栄養」「アレルギー」といった複数領域の複合的要因によって決まることが大きな注目を集めました。そこで、まずはご自身がどのタイプに当てはまるかを把握し、その人に合った予防策(オーダーメイド予防)を取ることが、今シーズンの感染対策では特に大切になってくるかと思います。


参考:Terada A., et al., Scientific Reports, 2025.(Network analysis reveals causal relationships among individual background risk factors leading to influenza susceptibility)