花粉症と喘息は関係する?
花粉症と喘息は関係する?
― 鼻と気管支は“ひとつの気道”という考え方―
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
今年も花粉症の季節になりました。
「鼻水が止まらない」「目がかゆい」「夜になると咳が出る」
そんな声を、元八事ファミリー内科クリニックでも多く耳にします。
今年の花粉は飛散量が多いみたいなので、症状が強く出ている人も多いみたいです。
そして、喘息の方にとっても、花粉症の時期は要注意なんです。
そこで今回のブログでは、花粉症と喘息との関係性について、書いてみたいと思います。
花粉症(アレルギー性鼻炎)とは何か
スギ花粉に対するアレルギー反応
花粉症は正式には「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。
スギ花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が鼻の中に入ることで起こります。
体の中ではIgE抗体(アレルギー反応に関わる抗体)が作られ、マスト細胞(炎症を起こす細胞)と結合します。
そこに再び花粉が入ると、ヒスタミンやロイコトリエンといった物質が放出され、鼻水・鼻づまり・くしゃみが出るんです。
花粉症と喘息はなぜ関係するのか
“one airway, one disease”という考え方
喘息患者さんの約70%がアレルギー性鼻炎を合併すると報告されています。
Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA): achievements in 10 years and future needs.
J Allergy Clin Immunol. 2012 Nov;130(5):1049-62.
鼻から気管支までの空気の通り道は、ひと続きの臓器としても考えることができます。この概念を「one airway, one disease」と呼びます。
つまり、鼻だけの病気では終わらない。
鼻の炎症が、気管支(肺へ続く空気の通り道)にも影響を与えるという考え方が現在の考え方です。
花粉症の季節に喘息が悪化しやすい理由
花粉症の時期になると、「咳が増える」「胸がゼーゼーする」といった症状を訴える喘息患者さんが増える傾向があります。 これは単なる偶然ではなく、鼻のアレルギー炎症が気管支に影響を及ぼすことが知られているためです。
鼻から気管支までの空気の通り道は、ひと続きの構造をしています。 そのため、鼻で起こったアレルギー反応が、気管支の炎症や過敏性(刺激に反応しやすい状態)を強めてしまうことがあります。
花粉症の季節に喘息が悪化しやすい理由として、主に次のようなメカニズムが考えられています。
①好酸球性炎症が気管支に広がる
花粉症では、好酸球(アレルギー反応に関与する白血球)が増える「好酸球性炎症」が鼻粘膜で起こります。 この炎症が気道全体に広がることで、気管支にも炎症が及び、喘息症状が出やすくなります。
②鼻づまりによる口呼吸
鼻が詰まると、自然と口呼吸が増えます。 口呼吸では、冷たい空気や花粉、ほこりなどが十分にろ過されないまま気管支に入るため、気道への刺激が強くなります。
③後鼻漏による咳の誘発
花粉症では鼻水が増え、その一部がのどへ流れ込むことがあります。 これを後鼻漏(こうびろう)と呼びます。 のどの粘膜が刺激されると咳反射が起こりやすくなり、咳が長引く原因になります。
④鼻と気管支をつなぐ神経反射
鼻粘膜の炎症による刺激が神経を介して気管支に伝わり、気管支が収縮しやすくなる現象があります。 これを「naso-bronchial reflex(鼻気管支反射)」と呼びます。
実際に、花粉飛散期には喘息のコントロールが悪化しやすいことが報告されています。
Allergic rhinitis and asthma: how important is the link?
J Allergy Clin Immunol. 1997 Feb;99(2):S781-6.
「春になると咳が長引く」 「花粉症の時期だけ胸がゼーゼーする」
こうした症状は、花粉症と気管支の炎症が関係している可能性があります。
鼻の症状だけに目を向けるのではなく、気道全体の状態を見ていくことが大切なんです。
花粉症があると喘息になりやすい?
花粉症がある方のなんと約30%が喘息を合併するというデータがあります。
Epidemiologic evidence for asthma and rhinitis comorbidity
J Allergy Clin Immunol. 2000 Nov;106(5 Suppl):S201-5.
ただし、花粉症が必ず喘息を引き起こすわけではありません。
大切なのは、「咳」や「息苦しさ」を見逃さないことです。
- 夜中や明け方の咳
- 運動後の咳
- 風邪後に咳だけ長引く
- 胸がヒューヒューする感じ
これらは気管支喘息のサインかもしれません。
花粉症と喘息の治療は「一緒に」考えることが大切
花粉症と喘息は、鼻と気管支という違う場所の病気に見えますが、実際には同じ気道で起きるアレルギー炎症です。 そのため、治療も別々に考えるのではなく、気道全体を一つとして整えていく視点がとても大切になります。
実際、花粉症の治療薬の中には、喘息にも効果がある薬が含まれています。 つまり、鼻を整える治療が気管支の安定にもつながるケースが少なくないんです。
花粉症の治療
花粉症の治療の基本は、抗ヒスタミン薬の内服になります。 ヒスタミン(アレルギー症状を起こす物質)の働きを抑え、鼻水やくしゃみ、目のかゆみを軽くする効果が期待できます。
代表的な薬としては、 ビラノア、デザレックス、アレロック、ルパフィン、クラリチン、ザイザル、などがあります。
鼻づまりが強い場合には、点鼻ステロイド薬を併用します。 これは鼻粘膜の炎症を直接抑える薬で、花粉症治療ではとても重要な役割を持っています。
さらに、症状のタイプによっては ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストなど) を併用することもあります。
このロイコトリエンという物質は、アレルギー炎症や気道収縮に関わる物質で、花粉症と喘息の両方に関係する炎症メカニズムの一つです。 そのため、この薬は花粉症だけでなく、喘息治療でもよく使われています。
症状が非常に強い場合には、オマリズマブ(抗IgE抗体製剤)という注射治療を検討することもあります。 IgE(アレルギー反応のスイッチとなる抗体)を抑えることで、アレルギー反応そのものを弱める治療になります。
喘息の治療
一方、喘息治療の中心になるのは吸入ステロイド薬です。
喘息では、気道炎症(空気の通り道の粘膜が腫れている状態)が続くことで、 咳・息苦しさ・ゼーゼーといった症状が起こります。
吸入ステロイドは、この気道炎症を直接抑える薬であり、喘息治療の基本となる治療です。
そして、ここが大事なポイントです。
鼻の炎症をしっかりコントロールすると、喘息のコントロールも安定しやすくなる。
こうした関係は、複数の研究で示されています。
つまり、 「鼻は鼻、気管支は気管支」と別々に考えるのではなく、 気道全体を一つとして整えていくことが、花粉症と喘息の両方を安定させる近道なんです。
花粉症の季節に 「咳が長引く」 「胸がゼーゼーする」 と感じている方は、鼻だけでなく気管支にも目を向けてみることが大切なんです。
最後に
花粉症の季節になると、
「なぜか咳だけ長引く」
「胸がゼーゼーして息がしづらい」
そんな症状を感じる方がいます。
その場合、鼻の症状だけではなく、気管支の炎症が関係している可能性もあります。
というのも、花粉症と喘息は、同じ気道で起こるアレルギーの病気だからです。
元八事ファミリー内科クリニックでは、呼吸器専門医の視点から、鼻の症状だけでなく気管支の状態まで含めて丁寧に確認しながら診療を行っています。
花粉症の時期に咳が続く、呼吸が少し苦しい、そんな違和感がある方は、どうぞ気軽にご相談ください。
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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