大人の隠れ食物アレルギー
大人の隠れ食物アレルギー
― 「昔は平気だったのに」の正体
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
みなさんは、以下のような経験はありませんか?
「昔は平気だったのに、最近エビを食べるとかゆくなるんです」
「口の中が少しピリッとするだけなので、気にしなくていいと思っていました」
子どもの病気という印象が強い食物アレルギーですが、実は大人になってから発症するケースもあります。しかも症状が軽かったり、はっきりしなかったりするために、自分でも気づかないまま経過していることが少なくないんです。
そこで今回のブログでは、そうした「大人の隠れ食物アレルギー」について、症状の特徴や見分け方、受診の目安を含めて整理していきたいと思います。
大人の食物アレルギーとは
子どもとは少し違う発症パターン
食物アレルギーは子どもの病気、と思われがちです。しかし成人発症も珍しくありません。
“Prevalence and severity of food allergies among US adults” (JAMA Netw Open. 2019 Jan 4;2(1):e185630. ) では、成人の約10%が何らかの食物アレルギーを持つ可能性が示されました。
大人の場合、突然発症したり、特定の条件でだけ症状が出たりします。軽症で長く続くことが多いことも特徴です。
隠れやすい症状
① 口の中だけの違和感
果物や生の野菜を食べた直後に、
「口の中がムズムズする」
「喉が少しイガイガする」
そんな軽い違和感を覚えたことはありませんか。
このような症状は、口腔アレルギー症候群(OAS)と呼ばれる状態の可能性があります。
食べ物そのものに強く反応しているというより、花粉とよく似た構造を持つタンパク質に体が反応して起っているんです。
そのため、花粉症のある方に多いのが特徴です。
大人になってから突然気づくケースも珍しくありません。
「少しかゆいだけだから気にしなくていい」と思ってしまいがちですが、これは体が出しているアレルギーのサインです。小さな違和感でも、繰り返すようなら一度きちんと整理しておくことが大切なんです。
② じんましんがたまに出る
「パンを食べたあとに走ったら、急にかゆくなって…」
このケースで考えたいのが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーというタイプです。
特定の食品を食べただけでは症状が出ないのに、そのあと運動が加わることで、じんましんや息苦しさなどのアレルギー症状が現れることがあるんです。
代表的なのは小麦です。普段は問題なく食べているため、原因に気づきにくいのが特徴です。
「体調のせいかな」「たまたまかな」と見過ごされやすいのですが、条件が重なることで起こるれっきとしたアレルギー反応です。繰り返すようなら、自己判断せず一度整理しておくことが大切です。
③ 咳や胃腸症状
食後にだけ出る咳。
なんとなく続く腹部の違和感。
原因がはっきりしない下痢。
「皮膚に出ていないからアレルギーではない」と思われがちですが、実はそうとは限りません。
アレルギー反応は皮膚だけでなく、呼吸器や消化管にも現れることがあるんです。
たとえば、気道炎症(空気の通り道が腫れて敏感になる状態)として咳が出ることがあります。
また、腸の粘膜が一時的に過敏になり、腹痛や下痢として表れることもあります。
「胃腸が弱いだけ」と片づけてしまう前に、食事との関係を一度振り返ってみることが大切なんです。
原因
免疫バランスの変化
私たちの免疫は、年齢とともに少しずつ変化していきます。
加齢だけでなく、強いストレス、感染症のあと、生活リズムの乱れ、腸内環境の変化なども影響します。
これまで問題なく食べていたものに、ある日突然反応する。
背景には、こうした免疫バランスの揺らぎが関わっていることがあるんです。
「急に体質が変わった気がするんです」
そう感じるのは、気のせいではないかもしれません。
花粉症との交差反応
もう一つ大切なのが、花粉症との関連です。
花粉に含まれるタンパク質と、果物や野菜に含まれるタンパク質の構造が似ていることがあります。
体はそれを同じものと認識し、反応してしまうことがあるんです。
その結果、口のかゆみや喉の違和感といった症状が出てくることがあるんです。

受診の目安
次のようなサインがある場合は、一度きちんと評価することをおすすめします。
・同じ食品を食べたあとに、毎回似た症状が出る
・果物や野菜を口にするたびに、口や喉に違和感が出る
・じんましんが出るタイミングと食事に関連がありそう
・食後に息苦しさ、動悸、めまいなど全身症状を感じる
特に、呼吸器症状を伴う場合は注意が必要です。軽く見ずに、早めの受診をお勧めします。
治療
治療の基本は、原因となる食品を避けることです。
ただし、「念のため全部やめておきましょう」というような過度な除去は行いません。生活の質を保ちながら、安全とのバランスを取ることが大切です。
症状が軽い場合には、抗ヒスタミン薬(かゆみやじんましんを抑える薬)を使ってコントロールしていきます。
一方で、これまでに強い全身症状が出たことがある方や重症化の可能性がある方には、アドレナリン自己注射の携帯を検討することもあります。
最後に
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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