感染予防に「うがい」は本当に効果的?
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニックの浅野です。
冬になると「外から帰ったら、まずうがい」とよく言われますよね。昔からの生活習慣として続けている方も多く、患者さんからも「先生、うがいって本当に意味ありますか?」と聞かれることもあります。
そこで今回のブログでは、科学的な根拠(エビデンス)と、私が実際の診療で感じていることを合わせながら、「うがいの本当の立ち位置」について、分かりやすくお伝えしたいと思います。
うがいに期待できる効果とは?
“水うがい”は風邪予防にある程度の効果がある
まず、最も信頼できる大規模研究では「水うがい」をすると、何もしない場合に比べて風邪の発症率が約36%低下したという結果があります。のどに付着したウイルスを物理的に洗い流すことで、感染成立を防ぐ…というメカニズムは、確かに理にかなっているかもしらません。
私自身も、診療中に風邪をひきやすい季節は、こまめに水でうがいをするようにしています。体感としても、のどの違和感がある時に早めにうがいをしておくと、悪化しにくい印象があります。
ただし、水うがいでインフルエンザを完全に防げるかというと、それは別の話 なんです。
インフルエンザへの効果は「あるかもしれない」レベル
インフルエンザだけに限った明確なデータは、実は多くありません。理由は、研究期間中にインフルエンザの流行が少ない年もあり、統計的な数が十分に集まりにくい影響があるかと思われます。
それでも、多くの患者さんを診ていると、
うがいを“しない”人より、“している”人のほうが悪化しにくい傾向はあると感じることは、確かにあります。
緑茶うがいはどう?
実は科学的にも“有望”!?
インフルエンザ発症リスクを約30%下げるという分析も
緑茶に含まれる「カテキン」という成分は、ウイルスの働きを弱める作用が知られています。複数の研究をまとめて解析した結果、
緑茶うがいを習慣にしている人は、していない人に比べてインフルエンザ発症率が約30%低い
という報告があります。
緑茶うがいに関しては、コストが特にかからず、副作用の心配がほとんどないのが良いところかと思います。
うがい薬はどうなの?日常的には“使いすぎ注意”
うがい薬(ポビドンヨードなど)は、のどの殺菌には確かに有効ですが、日常的に使うと「のどを守ってくれている常在菌(体に必要な菌)」まで減らしてしまう可能性があります。
実際の研究でも、
水うがい → 風邪予防に有効
うがい薬 → 水うがいと差がない
という結果でした。
毎日の感染予防目的なら、水か緑茶で十分だと思います。
ちなみに、自分も普段うがいをするときは、「うがい薬」は使用せずにシンプルな水うがいをするようにしています。
うがいの限界
「うがいだけやっていれば大丈夫」ではない
臨床でよく見る“落とし穴”
実際の診療では、
「うがいしてるのにインフルエンザにかかってしまった」
「毎日うがい薬を使っていたのに、結局家族内で広がってしまった」
という声をいただくこともあります。
これは決して、うがいが無意味だったということではありません。
理由はシンプルで、
ウイルスは“うがいをする前”に気道の奥に入り込んでしまうことがある
からなんです。
特にインフルエンザウイルスは、接触してから短時間で粘膜に入りこむため、「外から帰ってきてからの1回のうがい」では対策として弱く感じる場面もあるんです。
他の感染対策と比べた場合
うがいはどんな位置づけ?
最も効果が高いのはワクチン
インフルエンザウイルス感染に関して言えることは、「インフルエンザ予防の“柱”はワクチン」だということです。
インフルエンザワクチンは、発症リスクを半分程度に減らす効果が報告されており、重症化のリスクも減らしてくれる効果が期待できます。
この効果を考えると、うがいがワクチンの代わりになることはありません。
手洗い・マスクは“入り口を守る重要な防御”
手洗いでウイルスを落とし、マスクで吸い込む量を減らす。これは確実に効果があります。
家族内感染を防げた場合
会社内で一人だけ発症しなかった場合
などの場合、手洗い・マスクの徹底ができていたケースが多かったりします。
うがいは「最後のひと押し」
まとめると、感染予防は
ワクチン:大きな盾
手洗いとマスク:入口の防御
うがい:侵入してしまったウイルスを洗い流す“最終ライン”
というイメージが一番わかりやすいと思います。
結論:うがいはしたほうが良い?
「うがいは、やらないよりやった方が良い」
でも “うがいだけで感染は防げない”
これが最も現実的な答えだと、自分は考えています。
参考文献: 1. Ide K, Yamada H, Kawasaki Y. Effect of gargling with tea and ingredients of tea on the prevention of influenza infection: a meta-analysis. BMC Public Health. 2016;16:396. 2. Ide K, Yamada H, Matsushita K, et al. Effects of green tea gargling on the prevention of influenza infection in high school students: a randomized controlled study. PLoS One. 2014;9(5):e96373. 3. Kitamura T, Satomura K, Kawamura T, et al. Can we prevent influenza-like illnesses by gargling?. Intern Med. 2007;46(18):1623-1624.
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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