喘息治療をやめてしまったらどうなる?症状がない時こそ大切な理由
こんにちは。元八事ファミリー内科クリニック院長の浅野です。
外来で喘息の患者さんとお話ししていると、こんな質問をよくいただきます。
「最近は咳も出ないので、吸入薬はもうやめてもいいですか?」
「調子がいいので、つい薬を使わなくなってしまいました」
症状が落ち着くと、「もう治ったのでは」と感じますよね。実際、体調が良くなるにつれて吸入薬を使わなくなってしまう方は決して少なくありません。
ただ、ここに喘息という病気の少し難しいところがあります。
咳や息苦しさがなくても、気道の炎症が完全に消えているとは限らないんです。
そこで今回は、「喘息の治療を途中でやめてしまうとどうなるのか」について、呼吸器専門医の立場からできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
喘息は「気道の慢性炎症」という病気
喘息は、空気の通り道である気道にアレルギー性の炎症(腫れや刺激)が続く病気です。
この炎症があると、気道が敏感になり
- 咳が続く
- 夜間・朝方の咳
- ゼーゼーする
- 息苦しい
といった症状が起こります。
そして重要なのは、症状が落ち着いていても、気道の炎症は残っていることが多いという点なんです。
その炎症を抑え続けるための薬が 吸入ステロイド薬なんです。

喘息治療をやめると起こること
① 気道の炎症が再び強くなる
吸入薬をやめると、抑えられていた炎症が徐々に戻ってきます。
最初は症状がなくても
- 咳が出やすくなる
- 風邪で咳が長引く
- 夜間の咳が増える
といった変化が起こりやすくなります。
「風邪が長引いているだけ」と思われがちですが、 実は喘息の炎症が再燃していることも多いんです。
② 発作が起こりやすくなる
炎症が続くと、気道はどんどん敏感になってきます。
すると
- 花粉
- 寒暖差
- 風邪
- 運動
- タバコ煙
こうした刺激で急に発作が起こることがあります。
軽い咳から始まり、 夜中に強い咳や息苦しさが出て救急受診…。
これは実際に起こるパターンなので、注意が必要なんです。
③ 長期的に「治りにくい気道」になる
もう一つ、呼吸器の診療をしている私たちが気にしていることがあります。
それが気道リモデリングというものです。
少し難しい言葉ですが、簡単に言うと
炎症が長く続くことで、気道の壁がだんだん厚くなってしまってしまい、気道の内腔が狭くなってしまう状態のことです。
気道の構造そのものが変わってしまうイメージですね。
こうなると
・薬の効きが悪くなる
・咳が慢性的に続きやすくなる
・息切れが残りやすくなる
・ゼーゼー、ヒューヒューとした呼吸が出やすくなる
といった問題につながることがあります。
だからこそ、症状が落ち着いている時期も炎症をしっかり抑えておくことが大切です。
喘息治療を続けることは、将来の肺を守ることにもつながるんです。
実は、多くの患者さんが治療を続けられていない
驚かれるかもしれませんが、 喘息治療は「継続率が低い病気」と言われています。
ある研究では
吸入ステロイドを正しく継続している患者さんは約半数にしか満たなかった
という報告があります。
Adherence to treatment by patients with asthma or COPD: comparison between inhaled drugs and transdermal patch
Respir Med. 2007 Sep;101(9):1895-902.
さらに別の調査では、 高血圧や脂質異常症の薬は10日のうち6〜7日服用されているのに対し、
喘息の吸入薬は10日のうち2〜3日しか使用されていない
というデータもありました。
Achieving asthma control in practice: understanding the reasons for poor control
Respir Med. 2008 Dec;102(12):1681-93.
これは医療者側から見ると、かなり衝撃的な数字なんです。
なぜ喘息治療はやめてしまいやすいのか
理由はいくつかあります。
① 症状がなくなると「治った」と感じる
喘息は薬が効くと、症状がかなり良くなります。
そのため
「もう大丈夫そう」
と思ってしまうことも多いのですが、この時点ですぐに辞めてしまうことはよくないんです。
② 数字で管理しにくい病気
高血圧なら血圧、 糖尿病なら血糖値。
しかし喘息は、日常生活でわかりやすい数字がありません。
ピークフロー(息の勢いを測る器械)で管理する方法という方法もありますが、 全員が使っているわけではありません。
この「見えにくさ」も、治療継続を難しくしてるんです。
喘息の治療はいつまで続ける?
外来でとてもよく聞かれる質問です。
「この薬、いつまで続ければいいんですか?」
気になりますよね。
実は、「何年続ければ大丈夫」というはっきりした期間は決まっていません。
喘息は症状の出方や重症度が人によって違うため、状態を見ながら治療を調整していく病気だからです。
一般的には
・症状が出ていない
・発作が起きていない
・呼吸機能が安定している
こうした状態が十分な期間続いているかを確認しながら、医師の判断で少しずつ薬を減らしていきます。
元八事ファミリー内科クリニックでは、
最小限の治療で1年間安定して過ごせた場合には、吸入薬の中止を検討するように考えています。

特に大切なのは、春・夏・秋・冬すべての季節を問題なく過ごせるかどうか。
季節の変化や花粉、風邪などを乗り越えても症状が出ないか。
ここが一つの目安になります。
吸入薬は「症状がないとき」にこそ意味がある
喘息治療でいちばん大切なポイントは、
症状が出ていないときに、気道の炎症をしっかり抑えておくこと。
これが喘息治療の基本になります。
この考え方は、例えば
・高血圧の薬
・コレステロールを下げる薬
とよく似ています。
症状がないからといって治療をやめてしまうのではなく、将来の病気や悪化を防ぐために続けていくものです。
喘息でも同じで、吸入薬は発作を防ぎ、肺の働きを守るための治療なんです。
普段はあまり目立たない治療かもしれません。
でも、長い目で見るととても大切な役割を持っているんです。
喘息治療で迷ったら、一度ご相談ください
喘息は、症状が落ち着いたあとも気道の炎症が残っていることがあり、状態を見ながら治療を続けていくことが大切な病気です。
名古屋市天白区の元八事ファミリー内科クリニックでは、呼吸器専門医として喘息の診療に力を入れています。
吸入薬の調整や治療の見直し、長引く咳の原因の評価なども行っていますので、
「喘息の治療、このままでいいのかな」
「咳がなかなか治らない」
といったお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
記事監修:元八事ファミリー内科クリニック 院長 浅野貴光(呼吸器専門医、医学博士)
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